スマート介護士とは?仕事内容から資格の取得ルート、取得によるメリットを解説

介護の資格というと介護福祉士や実務者研修、介護職員初任者研修などがイメージされがちです。しかし、介護現場で役立つ資格はそれだけではありません。特にスマート介護士は、介護の効率性や生産性を高めるうえでは欠かせない専門職であり、有資格者への人材ニーズが高まりつつあります。 この記事ではスマート介護士創設の背景や資格取得の方法、平均給与額、さらには資格の将来性について詳しくご紹介しましょう。 これから介護職への就職・転職を考えている方はもちろんのこと、すでに介護分野で活躍されている方も、キャリアアップを考えるうえでの参考にしてください。 もっと見る
スマート介護士の仕事内容についてのイメージイラスト

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スマート介護士とは最先端の技術を扱える介護士であることを証明する資格

スマート介護士とは、介護ロボットあるいは介護センサーなどを活用しつつ、介護現場のクオリティの向上と効率化を実践できる介護士であることを証明する資格です。社会福祉法人善光会のサンタフェ総合研究所が資格の認定を行っています。

近年、介護現場では介護ロボットの導入が進められていますが、実際には「使用方法がわかりにくい」「使い勝手がよくない」といった理由から、十分に活用できていないケースが少なくありません。

介護ロボットなどの操作、生産性を上げるオペレーションシステムの構築などの作業には、正しく運用できる能力を持つ人材がいなければ施設としてうまく活かすことは難しいのが現実です。

そうした問題を解決する役割を担うのがスマート介護士です。介護ロボットや介護センサー等に関する知識を豊富に持つスマート介護士は、介護現場の効率化を実現し、介護職員の負担を減らせる人材として注目が集まっています。

スマート介護士創設の背景

介護業界の深刻な人手不足

スマート介護士の資格が導入された背景にあるのが、深刻化する介護業界の人材不足です。

公益財団法人介護労働安定センターが発表した『令和元年度介護労働実態調査』によれば、介護サービス事業所に対して「介護職員の過不足感」を尋ねるアンケート調査をしたところ、不足感があるとの回答割合は69.7%に上ることが明らかとなっています。これは過去10年の間で最悪の水準です。

人手が足りない一方で、要介護状態になるリスクの高い高齢者の人口は現在急速に増え続けています。厚生労働省の資料によると、後期高齢者と位置付けられている75歳以上の人口は、2015年時点では約1,632万人でしたが、団塊の世代が75歳以上となる2025年には2,180万人まで増加する見込みです。

わずか10年のうちで、500万人以上も増えるというのは驚異的な伸び率と言えるでしょう。その後も人口数は減ることはなく、2050年には2,400万人を超えると予想されています。

介護人材が足りない一方で、高齢者人口はどんどん増えるという状況が進行すると、介護現場ではどうしても業務過多となり、介護職員一人当たりの負担が増えていかざるを得ません。

「介護ロボット」導入の伸び悩み

介護分野の人手不足が深刻化する中、その問題を解消すると期待されているのが介護ロボットです。介護ロボットなどが職員に変わって介護や事務作業の負担を担うことで、職員一人当たりの生産性を向上させ、業務効率化を実現できると考えられているのです。

ところが、介護ロボットはすでに数多く開発されているものの、介護現場への導入・普及は思うように進んでいません。

公益財団法人介護労働安定センター『介護労働実態調査』(2016年)によると、介護ロボットを導入していないと回答した介護事業所は、全体の78.8%に上っていました。

介護ロボットが介護現場で使用されない最大の理由は、費用の高さです。「介護ロボットオンライン」の調査によると、介護ロボットを導入しない理由として最も多かった回答は、「価格が高いから」(56%)でした。費用面がネックとなって導入できないという点が、介護ロボットの普及を妨げる大きな要因となっているわけです。

しかし厚生労働省は現在、アシストカートやパワーアシストスーツといった介護ロボットについて、介護保険制度の適用とする検討を進めています。

具体的な計画としては、2020年度中に試験的に導入を行って効果を確認し、2021年度以降の介護報酬改定において最終的な判断を下すとのことです。

介護報酬の加算対象となる介護ロボットが増加すれば、介護現場への導入も進むことが期待できるでしょう。

スマート介護士資格を取得するには試験に合格する必要がある

スマート介護士資格を取得するには試験に合格する必要がある

受講申し込み対象者

スマート介護士の認定を行っている社会福祉法人善光会サンタフェ研究所によると、スマート介護士の対象者は以下の要件を満たす人と規定されています。

  • 介護施設において、施設長や介護主任、ユニットリーダーといった管理者の職に就いている方
  • 施設介護あるいは訪問介護に従事している方
  • 福祉用具の開発や販売に携わっている方
  • 介護ロボットやICT機器の開発や販売に携わっている方

試験の種類

スマート介護士の試験には基礎的な知識が問われるBasicとより実践的な知識が問われるExpertの二種類があります。

スマート介護士Basic

スマート介護士Basicは、試験勉強により介護ロボットへの理解や介護にかかわる基礎的な知識を学べる資格です。

一般の介護職員や介護ロボットのメーカーで働く人向けの初級資格として位置づけられています。合格するには正答率が70%以上であることが必要です。

スマート介護士Basic

スマート介護士Expert

スマート介護士Expert

スマート介護士Expertは、Basicよりも実践的なオペレーション構築について学習できる資格です。

介護施設における施設管理者や主任クラスの職員、介護ロボットや介護センサーを実際に現場で運用させる知識を身に付けたい方向けの中級資格として位置づけられています

出題範囲はBasicと同じですが、試験の難易度は高いです。合格するには正答率が70%以上あることが必要です。

入門編のBeginnerと上級のProfessional

スマート介護士には入門編にあたる「スマート介護士Beginner」もあります。こちらは受験の必要はなく、指定の認定校にて研修を修了すれば取得できる資格です。

また、スマート介護士Expertの資格取得者を対象とした、より上級レベルの「スマート介護士Professional」の導入も現在検討されています。

これから介護職として就職・転職を考えている方は、基礎的な知識を習得するという目的でスマート介護士Beginnerの取得を検討してはいかがでしょうか。

試験内容

スマート介護士の出題範囲はBasic、Expertとも同じで、以下の6項目です。

  • 介護ロボット概論
  • 介護基礎論
  • 介護オペレーション基礎論
  • 介護ロボットの評価論
  • 介護ロボットの導入と運用の実践
  • 介護業務支援システムの導入

「介護ロボット概論」では、介護ロボットとは何かということに始まり、現在行われている国の施策、普及に向けた問題などについて出題。「介護基礎論」では、ベッドから車椅子への移乗や排泄支援など、介護にかかわる基礎知識の理解度が問われます。

さらに「介護オペレーション基礎論」と「介護ロボットの評価論」では、介護業務では柔軟なオペレーションが必要であることや、介護ロボットを評価する基準が出題対象となります。

そして「介護ロボットの導入と運用の実践」と「介護業務支援システムの導入」では、介護ロボットを現場で運用するうえで必要となる実践的な知識にかかわる問題が出題されます。

合格率・難易度

スマート介護士Basicについては、標準的な知識が問われ、教科書をきちんと読んでいけば十分合格が狙える難易度と言われています。

一方、Expertの方は、教科書の内容は暗記するだけでなく、内容理解が問われてきます。教科書は図や写真が多くて読みやすく、資格試験のテキストの中では学習をしやすい方だと言えます。

Expertはやや難易度が高めとは言えますが、基本的にBasicもExpertも、まったく介護関連の知識がない状態からでも、合格を目指せるレベルです。特に、「介護基礎論」については、介護経験がなくても理解できる内容となっています。

受講費用

スマート介護士の受験費用は「スマート介護士Basic」が6,600円、「スマート介護士Expert」が8,800円、BasicとExpertを併願する場合は、両方合わせて1万3,860円です。

なお、施設や学校、企業単位で受験する場合、あるいは5名以上のグループでまとめて申し込みをする場合、割引を受けることができます。割引後の受験費用は、Basicが5,940円、Expertが7,920円です。

スマート介護士資格の勉強法

公式テキストやオンライン講座で学ぶ

公式テキストやオンライン講座で学ぶ

スマート介護士の資格認定を行っている社会福祉法人善光会のサンタフェ総合研究所では、公式テキストを販売しています。基本的には教科書で勉強を進めていく必要がありますが、なかには文字ベースで勉強を続けることが苦手な方もいるでしょう。

そうした方のために、同研究所ではスマート介護士のオンライン講座も実施しています。別途費用がかかりますが、動画を見ながら学習できるので、より内容の理解は早まるでしょう。

ただし、文字で勉強するのに慣れている場合は、テキストだけでも十分に合格できます。合格のレベルに到達する勉強期間としてはExpertで1~2ヵ月ほどです。

スマート介護士資格を取得するメリット

スマート介護士の資格を取得するメリットのひとつが、介護ロボットを運用することで介護現場の効率化を図れるという点です。

人手不足の中で介護職員が業務に追われる状況を介護ロボットにより改善できれば、空いた時間をより専門性の高いケアに充てることもできるでしょう。施設としての介護の質を向上させることにもつながります。

また、スマート介護士が介護ロボットを有効に活用することで、介護職員の業務全体を見直せるという点も利点です。

例えば、介護ロボットを使用した夜間見守りを行えば、夜勤をする介護職員の負担を大きく減らすこともできるでしょう。介護職員に無理をかけることを減らし、業務における無駄をなくしていくことで、より質の高い介護を実現できます。

現状、制度上で定められている人員配置を満たしていても、介護現場は多忙です。こうした忙しさが続き、介護職員の負担が多くなる状態が続くと、注意力が不足して利用者に転倒事故やベッドからの落下事故などが起こる危険性が高まります。

スマート介護士が運用する介護ロボットを活用し、個々の職員への負担を少しでも減らすことができれば、そうしたリスクを減らすことにつながるでしょう。

介護事故を未然に防ぎやすくなるという点も、スマート介護士の資格取得で生じるメリットと言えます。

スマート介護士の給料は?月給・年収相場と給与待遇

スマート介護士の実賃金(1ヵ月あたり)

スマート介護士の給料について、正確なデータはありませんが、参考までに介護職員全体の給料を見てみましょう。

厚生労働省の「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」によれば、介護職員の手当や一時金などを含めた月の平均給与額は下記の表のようになります。

年齢 男性 女性
29歳以下 30.3万円 29.1万円
30~39歳 35.1万円 31.5万円
40~49歳 36.6万円 32.4万円
50~59歳 34.1万円 32.4万円
60歳以上 29.7万円 29.5万円
出典:「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」(厚生労働省) 時点

例えば介護福祉士の資格を持っている場合、資格のない介護職員よりも平均で5万円程度給与額が高いです。

もし介護福祉士がスマート介護士の資格を取得し、さらに専門性を高めれば、さらなる待遇向上、キャリアアップに結びつく可能性が高まるでしょう。

スマート介護士の将来性

スマート介護士の将来性

スマート介護士の需要

少子高齢化が進み、介護人材が年々不足していくなか、その解消策のひとつとなるのが生産性の向上です。

限られた介護職員で業務を効率化し、施設としての生産性を高めていければ、人手不足の問題は解消できるでしょう。そのためには、介護ロボットの活用が欠かせません。

しかし、現在の介護業界では、介護ロボットやICT(情報通信技術)を使いこなせる人材が不足しています。そのため、スマート介護士の有資格者は、その意味で極めて貴重な人材であると言えるでしょう。就職・転職をする際、履歴書の資格欄に「スマート介護士」と記載することで、自分の強みとしてアピールできます。

さらに今後、スマート介護士にはExpertの上位資格である「Professional」が導入される予定です。将来的なニーズの高まりを考えると、スマート介護士(特にスマート介護士Expert)の資格を取得しておくことの利点は大きいと言えます。

スマート介護士に向いている人

スマート介護士の資格取得をお勧めしたいのは、第一に介護ロボットやICT技術を使って、現在の介護現場におけるオペレーションのあり方を変えたいと思っている方です。

各種情報技術を活用すれば、現状のオペレーションを改善して介護職員の負担を減らすことで、利用者一人ひとりと向き合う時間を増やし、介護の質を向上させることにつながるでしょう。

また、介護ロボットや見守りセンサーなどに関心はあるものの、理系の素養がなく、使用方法や活用の仕方がよくわからないという方にも、スマート介護士の資格取得はお勧めです。

社会福祉法人善光会サンタフェ研究所が作成している受験用のテキストは大変分かりやすく、一から介護ロボットやICTについて学びたい人にも適しています。

さらに将来性のある資格を取得しておきたいと考えている方にとっても、スマート介護士は最適な資格です。

高齢者が増加し続ける一方で介護人材が不足し、それを補うために介護ロボットの力が必要になるという状況は、今後さらに強まっていくと考えられます。

それに伴い、スマート介護士へのニーズは確実に高まっていくでしょう。将来性の高さという点では、スマート介護士は最も有望な資格のひとつです。