視能訓練士とは?仕事内容から受験資格、就職先を解説

視能訓練士とは、視力検査や視力の矯正などを行う資格です。 あまり聞き慣れない資格かもしれませんが、眼科での検診などでお世話になったことがある方も多いはず。 介護関連では、「機能訓練指導員」になるために必要な資格の1つとして知られています。 この記事では、そんな視能訓練士の資格を得るための方法を中心に解説。 仕事の内容だけではなく、年収などの給与待遇や就職先についても紹介していきます。

視能訓練士(CO)とは

視能訓練士とは、視能矯正や視機能の検査、視力にかかわる機能訓練指導などを行う専門職のことです。略称としてCO(Certified Orthoptist)が用いられ、小児から高齢者まで幅広い世代の目の健康を守る役割を果たしています。

1971年に制度化された国家資格であり、視能訓練士を名乗ることができるのは、国が実施している「機能訓練士国家試験」の合格者のみです。

かつては弱視の視能訓練という特定の分野での活動が中心でしたが、近年では視力にかかわるあらゆる分野で幅広いニーズがあり、将来的に活躍の場が広がっていく資格といえます。

人数・男女比

視能訓練士の男女比

厚生労働省の『医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフティングに関するヒアリング(第1回)開催案内』掲載の「タスク・シフティング 推進に関するヒアリング」(公益社団法人 日本視能訓練士協会)によれば、視能訓練士の数は2019年3月末日の段階で1万6,199人です。

また、同協会が2015年に公開した資料『視能訓練士調査報告書 2015年』によると、視能訓練士の男女比(2,264名を対象に調査)は、男性が13.2%であるのに対して女性は86.8%という内訳。現場では女性が中心となって活躍しているようです。

視能訓練士の仕事内容

目の検査や視力の矯正が仕事のイメージイラスト

視能訓練士は、医師の指導のもとで目の検査や訓練を行います。

主な仕事は、眼科での各種検査、斜視や弱視などの検査と訓練、視力が弱くなった人を対象にした「ロービジョンケア」、自治体や学校、職場などにおける健康診断で行う検査です。

最も業務を行う可能性が高いのが眼科検査ですが、どの業務の比重が多いのかは働く場所によって変わってきます。

以下の項目で、視能訓練士の具体的な仕事内容を詳しく見ていきましょう。

1.視力・眼圧・視野などを検査

視能訓練士は、さまざまな検査器具を用いて目の異常や病気をチェックします。

例えば、近視や遠視、乱視といった屈折異常や、加齢による白内障や緑内障といった目の病気の状態を検査で確認するのです。

検査は、視力検査をはじめとして眼圧検査や眼底検査、視野検査など多岐にわたり、メガネやコンタクトレンズの処方のための検査を行うこともあります。

視能訓練士が得た検査結果は、治療のために眼科医に引き継がれます。

視能訓練士は、適切な治療のために必要な情報を得て眼科医へ渡す、重要な仕事を担っているのです。

正確な検査を行うためには、複雑な検査器具を取り扱う能力や、検査結果を理解する能力が求められます。

2.斜視や弱視のリハビリ

斜視や弱視などの病状の回復やリハビリを助ける

斜視や弱視のように、目に障がいがある人に対して、症状改善のためのリハビリを行うのも、視能訓練士の仕事の1つです。

斜視や弱視の症状を持つ人は、両目で見たものの奥行きや立体感を正確に読み取って立体的に見る力である「両眼視機能」が十分ではありません。

このような人に対して、視能訓練士が訓練や指導を行います。

その際、眼科医とともに矯正プログラムを作成したり、器具を使用しての訓練を実施したりすることもあります。

そのほかにも、加齢や生活習慣病などが原因で視力が落ちて日常生活に不便を生じる人に対して、視力や視野の向上をサポートすることもあります。

このサポートには、生活の質を向上させるための「ロービジョンケア」(患者の持つ目の機能を最大限に活用させるためのケア)や、拡大鏡やサングラスなどの補助具の選定指導が含まれます。

3.集団検診で病気を早期に発見

視能訓練士は、病院や学校、保健所で集団検診を行います

そのため、子どもから高齢者まで、幅広い年代の人を相手にすることも少なくありません。

眼疾患の予防や早期治療のためには、健康診断で異常を正しく判断して早期発見することが大事です。

また、成人の眼科健診が、生活習慣病を発見し悪化を防ぐことにつながることも考えられます。

視能訓練士の給料はいくら?

視能訓練士の給料は、働く場所や地域などにより変動しますが、平均で年収300~450万円、月給では20~25万円程度です。

月収 20万円~25万円
年収 300万円~450万円

ちなみに、視能訓練士の給料は勤務施設によって大きく異なります。

私立の大学病院が最も高く、国公立病院、国公立に準ずる病院および診療所の順で年収が高い傾向にあります。

以下は、日本視能訓練士協会の「視能訓練士の現状と展望 2010年」という資料に記載してある、施設ごとの年間所得のデータです。

視能訓練士の勤務施設ごとの年間所得

国公立病院 404.9万円
国公立大学病院 330.6万円
国公立に準ずる病院及び診療所 378.6万円
私立病院 333.7万円
私立大学病院 427.1万円
私立眼科病院 302.2万円
眼科診療所 305.6万円
その他 361.9万円
無回答 370.0万円
出典:『視能訓練士の現状と展望 |2010年』(日本視能訓練士協会) 時点

視能訓練士は国家資格が必要な専門職のため、比較的給与水準は高めですが、働く地域によって給与に差が出ることが少なくありません。

さらに、国家資格の受験資格を得るまでの過程で、給与が異なる場合もあります。

加えて、視能訓練士の仕事は、アルバイトやパートなどの非正規雇用で勤務が可能な職場もあるため、出産・育児などで常勤が難しい人でも働くチャンスがあることも特徴です。

非正規雇用で働く場合の平均時給は1,800円程度ですが、こちらも働く場所と地域により差が出ることがあるでしょう。

視能訓練士になるには?

視能訓練士になるには、年に1回、毎年2月下旬に東京都と大阪府で行われる「視能訓練士国家試験」を受験して合格する必要があります。

視能訓練士の資格は厚生労働省が管轄する医療系国家資格の1つです。

視能訓練士の資格に期限は設けられておらず、更新制度もありません

そのため、一度合格して免許を取得すれば、視能訓練士として一生働けるのです。

ただし、視能訓練士国家試験は誰でも受験できるものではありません。

受験資格を得るには、特定の学校や養成施設で一定期間学んでいる必要があります。詳しく見ていきましょう。

1.受験資格を取得するためのルート

視能訓練士国家試験の受験資格取得ためのルート図

視能訓練士の資格を取得するには、主に3つのルートがあります。

「短大から養成所ルート」「大学・専門学校ルート」「海外養成施設ルート」の3つです。

いずれのルートも高校卒業者を対象としています。

1.【短大から養成所ルート】指定科目を2年以上履修+指定学校1年以上

短期大学などで2年以上指定科目を履修、それから文部科学大臣指定の学校、もしくは厚生労働大臣指定の機能訓練士養成所で1年以上学ぶことにより、受験資格を得るルートです。

視能訓練士養成学校に入学するまでに、短大などで以下の科目のうちから2科目を履修している必要があります。

  1. 外国語
  2. 生物学
  3. 保健体育
  4. 心理学
  5. 数学
  6. 教育学
  7. 物理学
  8. 倫理学
  9. 社会福祉
  10. 精神衛生
  11. 保育

高校卒業後の進学にあたって、将来の進路に選択肢の余地を残したい方にお勧めのルートです。

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2.【大学・専門学校ルート】文科省指定校または視能訓練士養成所で履修

視能訓練士養成課程のある4年制大学、または視能訓練士養成専門学校で3年以上学ぶことで、受験資格を得るルートです。

卒業と同時に資格取得を目指すことができ、即戦力として活躍できる高い専門能力を身につけることができます。

視能訓練士養成学校は3年制が一般的です。

ただ、一部4年制の養成学校もあり、こちらを卒業すると「高度専門士」(高度専門技術者)として認められ、4年制大学を卒業していなくても大学院への進学ができます。

視能訓練士養成課程のある4年制大学は、専門的な領域だけでなく、興味のある学問を幅広く学ぶことができるという点が魅力です。

3.【海外養成施設ルート】養成課程を修了した後日本で認定を受ける

最近では日本の方で海外に暮らしている期間が長いケースも珍しくありません。

日本以外の国で視能訓練士に関する学校または養成施設を卒業すれば、国内の2つのルートと同様に国家試験の受験資格を得ることができます。

また、外国で視能訓練士相当の免許をすでに取っている人も同様です。

ただし、厚生労働大臣の認可を受ける必要がありますので、事前に確認しておくようにしましょう。

2.2020年の国家試験合格率は96.1%

視能訓練士の合格率の推移

2019年度に行われた「第50回視能訓練士国家試験」は、受験者数が837人、合格者数が804人。合格率は96.1%となっています。

このうち新卒者だけを見ると、受験者数820人中、合格者数801人で合格率は97.7%です。

合格率は例年9割を超えており、合格の難易度自体は低めといえます。

視能訓練士養成のカリキュラムをきちんと修了し、試験前に復習・勉強しておけば、問題なく合格できるでしょう。

合格基準

第50回の視能訓練士国家試験は169点満点で構成され、そのうち102点以上取得することで合格基準を満たせました。

概ね6割以上の得点を取ることができれば、合格の水準に到達できるといえます。

試験問題は一般問題と臨床問題があり、一般問題は1問あたりの配点は1点で129点満点、臨床問題は1問あたりの配点は2点で40点満点です。

3.受験料

視能訓練士国家試験の受験手数料は2020年時点で1万5,800円です。

受験願書に、受験手数料分の収入印紙を張りつけて納付します。

指定の銀行口座に振り込むといった形式ではないので、注意が必要です。

なお、受験にかかわる書類が受理されたあとでは、受験手数料の返還には応じてくれません。

4.試験内容

試験科目は「基礎医学大要」「基礎視能矯正学」「視能障害学および視能訓練学」「視能検査学」です。

科目数は少ないですが幅広く出題されるため、試験日に備えて勉強を積み上げる必要があるでしょう。

各養成校で試験対策専用の授業や講義が行われている場合、積極的に参加することをお勧めします。

合格率が高いとはいえ、毎年、1割未満とはいえ不合格になっている受験者がいるのも事実ですので、油断は禁物です。

5.試験日と合格発表日

視能訓練士国家試験は例年2月に実施。

合格発表は毎年3月下旬ごろに、各地の視能訓練士国家試験運営臨時事務所にて受験地と受験番号を掲示する形で行われます。

第50回試験については、2020年3月23日(月)午後14時に合格者の掲示が行われる予定でしたが、新型コロナウィルスへの対策のため、掲示による発表は中止されました。

厚生労働省のホームページでの合格者の受験地と受験番号の発表、および受験者への試験成績と合否結果の書面による通知のみ行われています。

視能訓練士の就職先は?

1.老人ホームなどの高齢者施設

老人ホームをはじめとした高齢者施設のイメージイラスト

高齢化に伴い、視力低下や目に関するトラブルが発生し、日常生活に支障が来す場合があります。

そういった問題を解消するためには、目の機能回復を図る必要があり、視能訓練士の活躍が期待されます。

そのため、老人ホームなどの高齢者施設で機能訓練指導員として働く機会も得られるでしょう。

視力に関する職種は多くないため、需要も高いといえます。

2.病院やリハビリテーションセンター

就職先はイメージイラストセンター、病院などのイメージイラスト

視能訓練士が働く場は、主に眼科診療所です。

そのほかにも、総合病院や大学附属病院などで働ける可能性もあります。

また、医療機関の中でも視力矯正手術であるレーシックを行う専門病院や、目のリハビリを行うリハビリテーション施設で勤務することもあります。

医療機関やリハビリ施設以外では、視能訓練士になるための養成施設で勤務をしたり、大学で研究をしたりする人もいます。

計算や機械操作に抵抗がない人に向いている

計算や機械の操作に問題がない人が良いイメージイラスト

ここで、どんな人が視能訓練士としての適性があるのかをご紹介しましょう。

視能訓練士は人とコミュニケーションが欠かせない仕事です。

視能訓練士の仕事は、医師の指示の下で行われるので、医師との連携は必要不可欠です。病院で働くため、医師のみならず看護師との連携も求められます。

患者と向き合ってリハビリを行う機会もあるため、視能訓練士は人と接することに苦がない、コミュニケーション能力がある人に適性がある仕事です。

さらに、眼科の検査では、さまざまな検査機器を使用します。

必要な検査に最適な検査器具を使うことを求められるので、多数の検査機器の設定や使用方法など、正しく検査機器を取り扱う能力も必要です。

そのため、機械の操作に抵抗がない人が、視能訓練士として適しているでしょう。

視能訓練士が取り扱う検査結果は、その後の患者の治療に大きくかかわります。

眼科の検査では、数字や計算を多く取り扱い、その内容を検査結果として医師に引き継ぐため、検査で出た数値を正しく読み取って判断する計算能力も求められるのです。

このことから、計算能力の高い人の方が、視能訓練士に適向いています。

パソコン・スマホの使用者増で高い将来性

高齢化や、パソコン・スマホの使用者増加のため将来性は高いイメージイラスト

近年、視能訓練士の視覚は知名度が上がっている一方で、視能訓練士の資格を持って働く人の数はそれほど多くはありません。

逆に言えば、資格取得者が少ない分、需要が高い仕事でもあります。

先述のように、パソコンやスマホのIT技術の普及、高齢化などにより、目の問題を抱える人は増加しています。

また、医学の進歩に伴い、新たな眼科疾患が発見されるなど、より専門的な検査と治療を必要とする状況です。

特に現在は高齢化が著しく、高齢者の数も右肩上がりに増加しています。

加齢によるさまざまな眼疾患に対応し、生活の質を落とさないようにするため、高齢者に対する検査の需要も高まっています。

眼科の検査は、特に何の資格も必要とされておらず、無資格でもできる仕事です。

とはいえ、医学の進歩とともに検査機器も進化しており、より正確な目の検査を行うには専門知識や技術が必要となるケースも増えています

このような状況で、豊富な知識と技能を持つ視能訓練士という職業が注目を集めています。

今後も目の問題を抱える人が大幅に減ることはなく、むしろ高齢化やIT化により、視能訓練士が活躍できる場はさらに幅が広がると考えられます。

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