
レクリエーションが必要な理由と効果
なぜレクリエーションが必要なの?
人は誰しも、年齢を重ねてくると身体機能が低下していきます。
自分の体が衰えてきたことを実感している最中、家族や職員に運動指導を勧められても、「高齢だから」「病気だから」と運動に消極的な方が多いです。
しかし、体を動かさずにいると、骨や筋肉、関節の機能低下が発生し、より運動量が減るという悪循環になります。
そんなとき、レクリエーションを通して、楽しく適度な運動を取り入れることは最適な手段だと言えます。
レクリエーションの効果について

介護現場ではどんなレクリエーションが行われているのでしょうか。
体を動かすレク、頭を使うレク、指先を使うレク、音楽を使ったレクなど、たくさんの種類のレクリエーションを用意しています。
クイズなど頭を使う遊びや、折り紙など指先を使う遊びをすることで、脳が活性化し、認知症の予防や進行を食い止める効果があります。
また、軽い運動で体を動かすことにより、身体機能維持の効果も期待できます。
孤独を感じている高齢者がレクリエーションにより、周囲の入居者と交流することで、再び社会的活動の楽しさを知るきっかけになるなど、精神状態の改善にもつながりますよ。
レクリエーションは「ただ遊んでいるだけ」と誤解されがちですが、上記の効果をもたらす、大切な役割を果たしています。
どんなレクリエーションがあるの?
1.体を動かすレク

体を使ったレクリエーションは、日常生活で体を動かす機会の減った高齢者の方にとって、とても大切な時間です。
要介護者の方であれば、無理せず楽しみながら体を動かすことで、機能回復などの効果も見込まれ、自立支援サポートにもつながります。
また、まだ介護が必要でない方にとっても、体を動かすことは機能維持のために大切なこと。
日中、適度に体を動かすことで、食欲が出たり、入眠がスムーズになったりするなど生活リズムを整える効果も期待できるため、無理のない程度で体を動かせるレクリエーションは積極的に取り入れていきましょう。
体を動かすことだけが目的のリハビリの場合、当然、訓練としての要素が強く、高齢者の方にとってモチベーションを保つのも難しいもの。だからゲーム的な要素が強いレクリエーションにすることが大切です。
リラックスして、自発的に体を動かすことができるため、気軽に続けやすいことも大きなメリット。
また、高齢者の方の中には、寝たきりの方や車椅子を使っている方など、身体機能にもばらつきがある場合もあるかもしれません。そうした場合は、車椅子に座ったまま手足を動かせるダンスや体操など、誰もが参加できる内容であるか、という点にも注意をし、全員が楽しめる内容のレクリエーションとなることを心がけてみましょう。
2.手先・指先を使う(工作など)

高齢者向けのレクリエーションで、多くの介護施設が取り入れているのが、手先・指先を使ったレクリエーションです。
ハサミや針と糸などを使った、工作系のものが多いです。
工作は、手先を動かすことにより、脳の働きを活性化させる効果があるだけでなく、参加者がどのくらい手先を動かすことができるのかを把握する時間にもなります。
昔懐かしいお⼿⽟や、紙鉄砲などのおもちゃを作ることは、昔を思い出すこともできるため、⾼齢者の⽅に喜ばれるレクリエーションです。
でき上がった作品は、達成感を参加者にもたらしますし、館内に飾ったりお部屋に飾ったり、家族へのプレゼントとすることもできるため、レクリエーションへの参加意欲やレクリエーション以外の時間の楽しみも創出することができるなど、生きがいづくりにもつながります。
最近では、工作などで作ったものをバザーで販売するなど趣味活動として続けるだけでなく、社会に参加するきっかけにもなるような工夫をしている介護施設も見られます。
工夫次第で世界を広げることができることができるので、高齢者の方にぜひ積極的に取り組んでいきたいレクのひとつです。
3.頭を使う脳トレ

言葉遊びや計算など、脳を使って楽しむことのできるレクリエーションは、「脳トレ」などという言葉で広く普及しています。
こうした頭を使ったレクリエーションは高齢者の方にとって脳の働きを活性化するのに非常に効果があると言われています。
脳を活性化させるためには、「考える」「挑戦する」「判断する」などの行動がいいと言われています。
例えば簡単な計算を素早く解いていく計算ゲームや、ことわざや漢字など高齢者の方に馴染みのある言葉を使ったゲーム、パズルを解くなどのレクリエーションは認知症予防にもつながるレクリエーションの一つです。
認知症の高齢者の方に対しても、認知症症状の進行を遅らせる効果がありますので、ぜひ取り入れてみましょう。
ただし、認知症症状特有の認知能力の低下などにより、ルールが複雑だったりするとレクリエーションに参加することも難しくなります。
そうなると認知症高齢者の方のレクリエーションに対する意欲も低下してしまいます。
直感的に楽しめたり、簡単なルールでできたりするものを取り入れていく配慮が必要になってきます。
また、自分から物事に対する意欲を持つことが難しくなる認知症高齢者の方に対しては、興味が湧くような声かけもレクリエーションの導入でとても大切になってきます。
スタッフ間で協力しあい、声かけをすることも忘れないようにしていきましょう。
4.リラックス・リフレッシュする

老人ホームのレクリエーションでは、認知症予防や身体機能の維持と向上を目指すだけでなく、リラックスすることを目的としたレクリエーションも盛んに行われています。
老人ホームで生活する高齢者は、心身が衰えていくことへの不安をはじめ、他の入居者との人間関係や家族と離れたことへの孤独感など、日々の生活の中で感じるストレスは小さくありません。
以下のような、そんな状態を少しでも和らげるためのレクリエーションが、今では全国の老人ホームで積極的に導入されています。
- 相手の手を取って、指と手のひらをもみほぐしていく「ハンドマッサージ」
- 施設で犬や猫などの動物を飼育し、動物との触れ合いを楽しんでもらう「アニマルセラピー」
- 植物から抽出された香りのある精油を使って、リラックス効果をもたらす「アロマテラピー」
また、老人ホームを幼稚園児が訪問する異世代交流を行っている施設も多いようです。
入居者は昔流行していた遊びを教える、あるいは昔話を聞かせるなどして、子ども達とコミュニケーションを取っていきます。
こうした交流を通して、入居者は「自分でもまだ役に立てることがある」と自らの存在意義を再認識することができるというわけなのです。
レクリエーションの進め方
- <準備>
まずはレクリエーションができる場所を作ります。その後、利用者のもとをまわり、「レクリエーションを始めること」「プログラムの内容」などを伝えて誘導します。 - <オープニング(導入)>
利用者の状態はさまざまなので、全員揃うまで時間がかかることがあります。そのときはBGMをかけるなどしてリラックスした雰囲気の中で待ちましょう。全員が揃ったところで簡単に挨拶をします。挨拶があるとメリハリがつくので利用者も取り組みやすくなります。
このとき、今回のプログラムの内容を改めて説明します。また、「何時頃に終わるのか」「途中で気分が悪くなったらどうするのか」などを事前に説明することで、利用者の不安がやわらぎます。 - <本番(展開)>
レクレーション中は利用者の行動や発言、表情、ほかの利用者とのコミュニケーションなどを観察します。不安そうにしている利用者には再度ルールを説明したり、障害を持っていること方でも参加しやすいように工夫を施したりします。プログラムを終わらせることではなく、あくまでも「楽しい時間」の創造が目的であることを忘れずにいましょう。 - <クローズ(まとめ)>
今日の感想をたずねたり、次回の予定を説明したりします。最後はオープニング同様、挨拶をして終了します。
レクリエーションの時間を充実したものに
1.考えるのは実は大変
入居者にとってレクリエーションは、リハビリだけではなく、他者との交流や楽しみの部分も大きいのではないでしょうか。
とくに利用者の「機能訓練」を目的としているグループホームやデイサービスでは、盛んにレクリエーションを行っています。
老健では、集団リハビリテーションを導入する方法として、レクリエーションを取り入れている現場が増えてきています。
けれども職員の中には、「なかなかいいアイディアが浮かばない」「人前に出るのが苦手」など、レクを考えることに苦労している人も多いかもしれません。
もし、利用者の前に立ちレクリエーションをすることがどうしても苦手という場合は、勤務先で話し合い、配属場所を考えてもらうという選択肢もあるのではないでしょうか。
2.職員はこんな工夫をしている
レクリエーションによる身体機能の維持や向上、脳の活性化、精神状態の向上などの効果が見直されてきて、レクリエーションで利用者を楽しませることができる職員を求める施設が多くなっています。
レクリエーションによって、利用者に楽しい時間を過ごしてもらうことは、介護の仕事の重要な要素のひとつです。
職員がどのような工夫をしているのか、具体的に見ていきましょう。
時間配分を工夫する

せっかくレクリエーションを行っても、長すぎて利用者が飽きてしまうこともあります。
それを避けるためには、時間配分を考慮する必要があります。
例えば、レクリエーションの時間が長いのなら、ひとつだけではなく、ふたつのイベントを準備しておくのが良いでしょう。
また、初対面の方同士で間が持たない場合には、アイスブレイクを用意しておくと緊張をときほぐすのに効果的です。
ただし、計画通りに進むとは限らないということも心得ておかなければなりません。
レクリエーションの目的をしっかり伝える
レクリエーションに参加する人たちが楽しむためには、その内容をしっかり考えることが大切です。
このレクリエーションをなぜ行うのか。
利用者に楽しんでもらう、脳トレ、認知症予防のきっかけに、というような目的をしっかり掲げ、レクリエーションの計画を立てます。
一緒に取り組む職員の方も、目的がわかれば、レクリエーションに取り組む意欲が上がります。
大きな声でゆっくりと喋る
高齢者の方の中には、難聴などで耳が不自由な方もいます。
いくら楽しいレクリエーションでも、参加者に声が届かなければ、楽しさは半減してしまいます。
大きな声で、ゆっくりと話すことが大切です。
ときどき、参加者に「私の声が届いていますか?」「早口になっていませんか?」と確認を取ると良いでしょう。
また、常に笑顔で、ポジティブな言葉かけをすることを心がけましょう。
周りの人に協力してもらう
今回のレクリエーションは自分の担当だからということで、1人だけで切り盛りしようとしても、なかなかうまくいきません。
そのような場合は周りの職員に一緒に盛り上げてもらうと良いでしょう。
職員の中には、レクリエーションが得意という人もいるでしょう。
そういう人には積極的にアドバイスをしてもらいましょう。
また、参加者に進行を割り振るのもひとつの方法です。
高齢者の方は自分が頼られたと感じることで、自信を取り戻すことにつながるかもしれません。
ボランティアの力を借りる
デイサービスは利用者の「機能訓練」が主な目的のひとつなので、基本的にはレクリエーションを毎日行っています。
規模が小さなデイサービスでは、レクリエーションの担当になることが多く、職員の負担になることもあります。
そんなときは、施設の近くにある趣味サークル(囲碁、ゲートボール、お菓子作り)などに協力してもらうこともひとつの方法です。
楽器の演奏やダンス、マジックショーなど、いろいろな特技を持つ人が担当することで、今までとは違った楽しいレクリエーションになるかもしれません。
笑顔を心がける

レクリエーションを盛り上げるには、まず笑顔を絶やさないということが大切です。
レクリエーションが苦手だという人の多くは、緊張して表情がこわばっているのではないでしょうか。
自分自身が楽しむことができればベスト。
そのためには、ニコニコと笑うことが大切です。
それだけでその場がかなりリラックスした雰囲気になります。
3.専門資格を取ってみる
最近の介護施設では、高齢者の方がレクリエーションを通じて、日々を楽しく過ごしていくことが、喜びや生きがいにつながると認識されていて、レクリエーションの重要さがますます注目されています。
介護レクリエーションを学びたいという方は増えています。が、「初任者研修」や「実務者研修」といった公的な研修ではレクリエーションについて深く学べません。
近年、施設のレクリエーション活動に生かせる資格として注目を集めているのは、日本レクリエーション協会が認定している「レクリエーション・インストラクター」「福祉レクリエーション・ワーカー」、日本アクティブコミュニティー協会が認定する「レクリエーション介護士」。
こういった民間の資格は、全国で講習会も開催されています。
機会を見つけて参加してみるという選択肢もあるのではないでしょうか。
レクリエーションを行う際のポイント
1.安全に配慮する

現在、介護の現場では人手不足という現状があります。
そのため、レクリエーションに参加する高齢者に対して、進行や見守りを行う介護職員が不足するケースも考えられます。
参加者が転倒や怪我をしないように介護職員が目を配り過ぎて進行に集中できないと、参加者の集中力も下がってしまいます。
レクリエーションを行うにあたっては無理をせず、身体状況に合った「安全」に配慮するようにしましょう。
たとえば椅子に座った状態でできるレクリエーションを導入すれば、座ったまま行えるので、転倒や怪我のリスクを大きく減らすことができます。
2.自尊心を傷つけない

レクリエーションにはさまざまなメリットがありますが、その一方で、入居者がレクリエーションへの参加を嫌がることも少なくありません。
レクリエーションでは合唱や折り紙などが行われますが、そうした取り組みが子どもっぽい内容に感じられて、自尊心が傷つくという人もいるのです。
また、対戦式のゲームをすると、負けた側の自尊心を傷つけてしまい、そのことが人間関係に悪影響を与えるということも起こり得ます。
子どもっぽく感じられたり、自尊心を傷つけたりしないようなレクを行うことも大事だと言えるでしょう。
3.無理強いはしない

レクリエーションを行う上で大切なのは、参加の呼びかけは行っても、参加を無理強いしないということです。
本人がやりたくないと感じているときは、本人の意思を尊重することが大切です。
参加するよう強く求めると、そのことにストレスを感じるようになり、レクリエーションの場から遠ざかる原因にもなりかねません。
本人が参加してもよいと感じているときに、参加してもらうようにしましょう。