介護福祉士の給料相場(平均値)
介護福祉士の給料相場はどれくらいでしょうか。年齢別や男女別、資格による給料の差、都道府県ごとの違いなど、気になる介護福祉士の給料事情を見ていきましょう。
1.年齢、男女別の平均給与
厚生労働省の「平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果」によれば、介護職員の年齢、男女別の平均給料は下のグラフのようになります。
このグラフを表にすると以下のようになります。
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
29歳以下 | 28万6,920円 | 27万4,450円 |
30~39歳 | 32万5,930円 | 29万2,530円 |
40~49歳 | 34万3,420円 | 29万8,610円 |
50~59歳 | 31万4,030円 | 30万260円 |
60歳以上 | 27万1,610円 | 27万2,760円 |
年齢が上がるにつれて給料も上がっていき、男性は40代、女性は50代が最も高くなっています。男性の方が女性より月換算で1~3万円ほど高くなっていますが、60代になると女性の方が高くなっています。
なお、こちらは介護福祉士に限らず、介護職員初任者研修修了者、介護福祉士実務者研修修了者を含めた介護職員全体の平均です。
しかし、介護福祉士も上記のデータと同様、年齢が上がるほど給料も上がる傾向にあると考えていいでしょう。
2.介護福祉士の初任給
勤務先によっても異なりますが、平均的な介護福祉士の初任給は約16万円。規模が大きい施設ほど新卒採用でも高い傾向があります。
ただし、中途採用の場合は、初任給でも介護の実務経験が考慮されるため、最初から比較的高めの給料が出されることも。ちなみに、初任給の約16万円は基本給。それ以外の夜勤手当や通期手当などがプラスされると、手取りの給料額はもっと高くなります。
3.手取りは額面給料の7~8割
給料には、総支給額といわれる額面給料と、実際に手に入る手取り額の2つがあります。総支給額とは基本給や各種手当てをすべて合算したもともとの給料額です。
そこから税金や保険料、貯蓄積立などが差し引かれて(控除)、銀行口座に入金されます。それが手取り額です。一般的に、手取り額は額面給料の7〜8割程度です。
4.介護福祉士のボーナス
介護福祉士のボーナスは一番高い50代でも155万円程度。夏と冬のボーナスを合わせた4ヵ月分の平均です。
20代前半の新卒や経験の浅い職員はボーナス約64万円、20代後半は約97万円と4ヵ月分でも100万円にとどかず、経験豊富な50代とはかなり差が出ています。50代の介護福祉の年収平均は約510万円。およそ3分の1弱をボーナスが占めるのが特徴です。
5.資格有無による給料の差
介護福祉士の資格手当
介護福祉士の資格手当の相場は約1万円〜1万5000円程度です。しかし、「平成30年度介護従事者処遇等調査結果」によれば、資格のない介護職員の平均給料が約26万円なのに対して、介護福祉士は約31万円。単純に資格の有無だけで5万円程度の開きがあるのです。
介護福祉士と介護職員初任者研修
介護福祉士の資格手当1万円〜1万5000円に比べて、介護資格のエントリー資格である介護職員初任者研修は数千円程度。介護福祉士が優遇されているのがわかります。
また、実際の給料相場も介護職員初任者研修は額面給料が月額285,610円なのに対して、介護福祉士は313,920円。約2万8000円の差があります。
介護福祉士と実務者研修
介護職員初任者研修と介護福祉士の中間的な資格といえる実務者研修の給料を比較すると、実務者研修は額面給料月額28万8,060円。介護福祉士の31万3,920円に比べて約2万6,000円のちがいがあります。
都道府県ごとの平均給料
1.給料の高いのは東京
介護福祉士の給料は地域によって大きくちがいます。一般的に、地方より都心部の方が高い給料が支払われている傾向があります。
「賃金構造基本統計調査」で比較してみましょう。介護職にあたる福祉施設介護員の1位は東京都で約28万円です。
2.給料の低いのは青森
1位の東京都に比べて、47位の青森県は9万円低い約19万円。同じ業種でも都道府県が異なるだけで年収に大きな差が出るのがわかるでしょう。
雇用形態別の収入一覧表
月給制の者 | 23万8,440円 |
---|---|
日給制の者 | 16万5,282円 |
時間給の者 | 10万8,786円 |
介護福祉士の月収の相場は20万円~25万円ほど、年収の相場は300万円~370万円ほどです。
1.正社員の場合
日本全体の正社員の平均と介護福祉士の平均給料を比較してみます。日本で正社員として働く場合、平均年収は国税庁「標本調査結果」によると441万円。
一方で、介護福祉士は平均年収351万円〜415万円。平均的な会社員より低めの水準となっています。
2.アルバイトの場合
アルバイトの介護福祉士の平均時給は1,000円〜1,700円。一般的なアルバイトよりは時給はかなり高めです。
ただ、国家資格を持ち介護の現場で活躍が期待されているのを考えると、自然な数字といえるかもしれません。
3.派遣の場合
派遣で働く介護福祉士の時給は、平均もしくはそれ以上の待遇です。それは、介護福祉士が国家資格であること、スキルによって現場の即戦力として期待されていることなどが関係していると考えられます。
介護福祉士の場合、1,600円~2,000円程度の時給が相場となっています。
働く福祉施設ごとの平均給料
厚生労働省の「平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果」によれば、介護福祉士の平均給料は常勤者の月給で以下のようになります。
施設 | 平均給与額 |
---|---|
特別養護老人ホーム | 34万2,230円 |
介護老人保健施設 | 32万6,540円 |
介護療養型医療施設 | 29万7,150円 |
訪問介護事業所 | 30万1,480円 |
デイサービス | 27万7,010円 |
グループホーム | 29万1,500円 |
1.特別養護老人ホーム
特養と呼ばれる特別養護老人ホームで働く正社員の平均月収は約34万2000円。手取りだと約27万3,000円です。
平均年収は約410万円で、介護職員の中でも給料面では厚遇されています。介護福祉士の平均月収と比べても2万円ほど高い数字です。
2.老人保健福祉施設
老健と呼ばれる介護老人保健施設で働く正社員の平均月収は約32万6,000円。手取りで約26万1,000円です。
平均年収は約392万円で、介護福祉士の平均月収と比べて1万円以上高い給料相場といえます。
3.介護療養型医療施設
介護療養型医療施設の正社員の平均給料は、介護福祉士の平均金額でイメージできます。平均月収は約31万3000円。
手取り額は約25万1,000円で、平均年収は約377万円です。介護療養型医療施設の給料も、施設や経験などによって多少変化します。
4.訪問介護事業所
正社員のホームヘルパーとして訪問介護事業所で活躍する場合、額面給料の月収で平均30万1,000円、手取りでは約24万1,000円です。年収ベースでは平均で約362万円となっています。
介護福祉士全体の平均給料と比べると、額面給料の月収で約7万円低い金額となっています。
5.デイサービス
正社員としてデイサービスの介護職員で勤務する場合、平均月収約27万7,000円、手取りの給料額は約22万1,000円です。年収ベースでは平均で約332万円となっています。
介護福祉士全体の平均給料と比べると、額面給料の月収で約5万円低めの給料支給です。
6.グループホーム
正社員として認知症の患者さんの集団生活をサポートするグループホームで働く職員の平均給料は、介護職員の平均でイメージできます。
常勤の平均月収は約27万2000円。通所介護事業所よりはやや低めとなります。
7.施設規模別の平均給料
施設の種類だけでなく、施設規模によっても平均給料は変わってきます。福祉施設介護員の年収を施設規模別に比べると、最も低いのは10人〜99人の施設で平均330万円。
それに対して、1,000人以上の規模の大きな施設は348万円、100人〜999人は344万円、10人以上は340万円となっていて、最大18万円ほど高い数字となっています。
介護福祉士の昇給の状況
介護福祉士が勤続した場合、どれほど昇給していくのでしょうか。介護職員全体の、勤続年数ごとの平均月収のデータを参考に考えてみましょう。
「平成29年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護職員全体の勤続年数ごとの平均月収は以下の通りでした。
1.勤続年数ごとの平均月収
以下は、介護職員の勤続年数ごとに平均月収を比較したグラフになります。このグラフを表にすると、以下のようになります。
勤続年数 | 平均月収 |
---|---|
0年(勤続0ヵ月~11ヵ月) | 23万2,460円 |
1年(勤続0ヵ月~11ヵ月) | 26万4,550円 |
2年(勤続0ヵ月~11ヵ月) | 27万1,110円 |
3年(勤続0ヵ月~11ヵ月) | 27万9,020円 |
4年(勤続0ヵ月~11ヵ月) | 28万3,520円 |
5年(勤続0ヵ月~11ヵ月) | 28万9,980円 |
6年(勤続0ヵ月~11ヵ月) | 29万2,770円 |
7年(勤続0ヵ月~11ヵ月) | 29万8,960円 |
8年(勤続0ヵ月~11ヵ月) | 30万3,600円 |
9年(勤続0ヵ月~11ヵ月) | 30万6,960円 |
10年(勤続0ヵ月~11ヵ月) | 31万2,360円 |
ご覧の通り、介護職員全体の平均月収は、勤続年数が1年増えるごとに、5,000円~3万円ほど増加しています。
上記のデータは、あくまでも介護職員全体のデータで、介護福祉士だけのデータではありません。
しかし、介護福祉士の資格保持者も、上記のデータと同様、勤続年数が増えるほど定期的に昇給すると考えて良いでしょう。
2.介護職員等処遇改善加算で給料アップ
給与アップに必要な勤続年数は10年
介護福祉士は人手不足が続いていることから、国を挙げて待遇改善が続けられています。とくに「介護職員等処遇改善加算」によって10年以上の勤続年数を持つ介護福祉士は月8万円程度の給料アップが始まりました。
施設が一定の条件をクリアすれば介護報酬で請求できる介護職員等処遇改善加算。介護福祉士の給料の底上げになると期待されています。
介護福祉士が給料を上げる方法とは?
ここからは、介護福祉士からステップアップして収入増につなげるために、おすすめのアプローチをいくつかご紹介します。
1.スキルを磨く
給料が高い人ほど現場で豊富な経験を積んでいるケースが大半です。介護スキルは知識だけでなく業務の中で実践してはじめて身につくことも多いもの。
また、介護現場で評価されるには、介護技術だけでなく実務能力やコミュニケーションスキルも求められます。
2.手当を増やす
夜勤手当
夜勤専従のように、夜勤メインで働くと、日勤中心のワークスタイルよりも効率よく働くことができます。週に1回、または2回でも夜勤を追加するだけでも、まとまった給料増が見込めます。
年末年始手当
パートや派遣社員が手薄になる年末年始に集中して勤務を入れると、休日のため年末年始手当が加算されます。同じ日勤や夜勤でも手当が加わるので、年明けの給料アップにつながります。
役職手当
同じ施設や事業所で勤務年数を重ねて、責任ある管理職に昇進するのも、給料アップの近道です。介護業界では、一般職員と施設長などの管理職とでは、月給でおよそ14万円、年収ベースではおよそ180万円もの差が生まれます。
3.給料アップの交渉をする
今勤務している施設で頑張っていると思うなら、自分がどれくらい貢献しているかを基に、上長と昇給や手当追加の相談をしてみましょう。
もしその場では給料アップにつながらなくても、施設がどのような仕事を求めているのかがわかれば、今後の働き方や交渉を有利に進められます。
4.ケアマネージャーなどの資格も取得する
介護福祉士が、勤続年数を増やす以外の方法で給料アップを目指すには、上位資格のケアマネージャー(介護支援専門員)の資格を取得するのが王道です。
ケアマネージャーは、介護福祉士など介護現場での経験やスキルをベースに、介護を必要とする人やその家族のため適切なケアプランを作成するのが主な仕事です。
ケアプラン作成のためには、介護全般の知識を広く身に着けておく必要があります。
ケアマネージャーには、利用者やその家族、施設や事業所の職員、さらに官公庁や団体、医療機関などさまざまな立場の人たちとかかわって、円滑にコミュニケーションする能力も必要です。
介護福祉士からケアマネージャーにキャリアアップする場合、学んできた介護知識やコミュニケーションスキルを役立てて、収入アップにつなげられます。
5.管理者にキャリアアップする
同じ施設や事業所で勤務年数を重ねて、そのうえで責任ある役職を持った管理職に昇進するのも、給料アップの近道です。
介護業界では、一般職員と施設長などの管理職とでは、月給でおよそ14万円、年収ベースではおよそ180万円もの差があるといわれています。
そのため、介護福祉士の上位資格を取得しなくても、一般の介護スタッフとして経験を積んで職場で認められれば、給料アップや役職手当が望める管理職に抜擢される可能性も高くなります。
ただし、単に長年介護福祉士の業務をすれば管理職になれるか、というとそうとは限りません。
管理職になる人は、リーダーシップがある人や、実際に職場でスタッフをサポートした実績がある人、前職までに管理職の経験がある人のことが多く、高いハードルがあるのも事実です。
6.転職する
上位資格のケアマネージャーの資格取得、管理職へのチャレンジなどは、給料アップに繋がりやすいスタンダードなルートです。
しかし、なかには会社の経営方針や配置人数などの関係で、こういった方法による給料アップが難しいケースもあります。
もし、介護福祉士として確かな成果を上げていると自信がある場合は、まず今勤めている施設の上長に昇給や待遇改善の働きかけをしてみることをおすすめします。残念ながら思うようにならないとわかったら、転職を考えるのも良いでしょう。
給料の金額には、経験や能力だけでなく勤務先の運営規模や収支状況、さらに人件費に対する経営上の捉え方をはじめほかのスタッフとの関係や地域性など、さまざま要因が絡まって現れています。
給与アップ目的で転職を考えている場合、「どのような昇給制度なのか」や「地域の給料相場はどのくらいか」などを応募する前や面接時のタイミングで確認することをおすすめします。
そして、満足いく給与待遇や昇給制度が用意されている、もっと能力が発揮できる会社への転職を目指すのが良いでしょう。