視能訓練士の給与相場(平均値)
1.年齢別の平均給与
視能訓練士は年齢によって収入に差があります。勤務先によっても変わってきますが、20代のうちは月給18万~20万が一般的です。
年齢が上がると実務経験も増えるため収入も上昇し、30代~40代で月収25~30万円ほどになると言われています。
医療業界の中では年収は低めの部類に入りますが、施設によっては勤続年数が長いと年収が500万円を超える場合もあるため、個人差も大きいです。
また、日本視能訓練士協会の「視能訓練士実態調査報告書」によれば、2015年時点における視能訓練士の男女割合は、男性が13.2%、女性が86.8%となっています。
9割近くが女性である専門職であるため、平均年収が性別によって大きく変わることはないでしょう。女性が働きやすい職といえます。
2.初任給
視能訓練士の初任給は、大卒だと約18~20万円が相場です。ただし、勤務する病院の規模などによって実際の金額は変わり、労働組合のある大きな病院などでは、給与額は高めになる傾向があります。
他の医療分野の専門職に比べて給与額は決して高いとは言えません。しかし、女性が働きやすく、結婚・出産を経ても資格を活かして長く働き続けることができます。
また、勤務先によって違いもありますが、ボーナスが出ることも多いです。
視能訓練士は患者さんから感謝されるという点で、やりがいのある仕事といえます。視能訓練士としての仕事に意義を感じることができれば、勤続年数を増やし、昇給も期待できるでしょう。
3.手取り
視能訓練士は年代や勤務先にもよりますが、手取り額は20万円代が相場です。大きな病院に勤務している場合などは30万円近くになると考えられます。
眼科にかかわる医療分野の専門職の中でも、眼科医はもちろん、看護師などと比べても収入面で劣るのが一般的です。
しかし、公立の病院で働く視能訓練士は地方公務員となり、安定して働くことができます。
また、資格試験の合格のしやすさや、夜勤を伴うような勤務がないことを考えると、心身に負担をかけることなく、毎月一定の手取り額を得られる働きやすい専門職といえるでしょう。
4.看護師との給与比較
病院の場合、内科や小児科、外科など各分野に特化した医師、看護師、専門スタッフなどが勤務しているのが一般的です。視能訓練士は眼科で働く専門職ですが、同じ職場には眼科専門の医師、看護師が働いています。
厚生労働省の統計によれば、看護師の平均年収は約440万円。眼科に配属されている看護師の年収もこの額に準ずると考えられます。
一方、視能訓練士の平均年収は300~400万円ほどであり、平均値でみると看護師よりも低めです。
医師よりも収入が低いのは、要求される専門能力や職に就くまでにかかる費用などを考えると当然ともいえます。しかし、同じ眼科で働く看護師よりも給与が低いという点に不満を感じ、転職や退職を考える視能訓練士もいるようです。
もし看護師との給与格差が気になる場合は、就職・転職先を考える際に、その点に関しての情報も収集しておくとよいでしょう。
それでも視能訓練士の中には、仕事にやりがいを感じて、1つの病院やクリニックに長く勤務している方はたくさんいます。
看護師との給与差は不満点にはなり得ますが、職務内容に意義を感じながら取り組めれば、1つの職場で長く働き続けることができるでしょう。
5.学歴による収入の差
視能訓練士の給与額は、本人の実務経験やスキル、勤務先によって変わるのはもちろんですが、最終学歴による影響もあるといわれています。
視能訓練士の資格を取得するには、養成課程のある3年制の専門学校もしくは4年制大学の卒業が必要です。どちらのルートでも視能訓練士を目指すことができますが、一般的に4年制大学卒の方が所得は多くなっています。
将来的に視能訓練士として働くことを決め、その上で進学を考える場合は、就職後の待遇を考えて専門学校よりも大学に進学した方が良いでしょう。
ただし、専門学校は3年で卒業できるので、より早く国家試験に合格して就職したいのであれば、専門学校への進学をおすすめします。
働く施設ごとの平均給与額
1.公務員として公立病院で働く
視能訓練士は公務員として市立病院など公立の病院で勤務できます。視能訓練士の平均月給は20代のうちは20万円台、30代になると30万円前後で、それぞれ年収に換算すると300~400万円程度です。
しかし、公立の病院に勤務する視能訓練士の場合、平均年収は500~600万円ほどになるといわれています。そのため、全体としての平均値でみると、公務員として勤務する場合の年収はやや高めです。
また、公務員として働く場合、その大きなメリットの1つが安定性。定年まで長く勤務し続けたいのであれば、公立病院はうってつけの勤務先といえます。
2.私立大学病院で働く
日本視能訓練士協会の「視能訓練士実態調査報告書」によれば、勤務施設別に視能訓練士の平均年収をみた場合、最も高いのは「私立大学病院」で、その額は495.6万円となっています。
あくまで平均値ではありますが、私立大学病院に勤務する視能訓練士の年収は、国公立病院や国公立に準ずる病院及び診療所、国公立大学病院などよりも高いです。
将来的に視能訓練士として働くことを希望し、現在国家試験の合格を目指しているという方は、就職活動をする際にこの点を踏まえておくとよいでしょう。
もちろんどこの職場であっても、患者さんから感謝される職務を行うという点では共通しています。
しかし、もし給与額という点も重視したいのであれば、私立大学病院を中心に就職活動を検討してみるのも1つの方法です。
雇用形態別の収入一覧表
1.正規職員
「視能訓練士実態調査報告書(2015年版)」によれば、視能訓練士の正規職員が受け取る平均年収額は405.7万円です。しかし年収額は各人の実務経験や能力、勤務先によって変わってくるため、同じ正規職員であっても実際の額は個人によって大きく違います。
視能訓練士として働きながら安定した収入を得たいという方は、資格取得後、正規職員としての勤務を目指して就職活動を行うのが合理的です。
また、同じ職場で勤続年数を経ていくことで、昇給も期待できるでしょう。正規職員はフルタイムで勤務する働き方ではありますが、視能訓練士は他の医療職のように、夜勤など激務が要求される職務内容ではありません。
そのため、家事や子育てをしながら安定した収入を得たいという人にも向いています。
2.非正規職員
契約社員やアルバイト・パートといった非常勤職員の場合、平均年収は216.9万円です。正規職員ほど給与は高くないものの、勤務時間に融通が利くというメリットがあります。普段は主婦・主夫をしていて、非常勤職員として扶養内で勤務するという人も多いです。
例えば、所定の期間のみ勤務する契約を結ぶ契約社員の場合、原則として契約期間のみの勤務であるため、正規職員のように将来にわたる昇給が望みにくい面があります。
しかし、施設によっては契約が更新され、長期的に同じ職場で働けることも多いです。契約職員として経験を積み、病院・クリニックに正規職員として就職を目指すという道もあるでしょう。
視能訓練士の昇給の状況
経験年数ごとの収入推移
「視能訓練士実態調査報告書(2010年版)」によると、視能訓練士の勤務先における勤続年数別の年間所得は「5年未満」だと286.9万円、「5年~10年未満」は350.2万円でした。
経験年数 | 平均年収 |
---|---|
5年未満 | 286.9万円 |
5年~10年未満 | 350.2万円 |
10年~15年未満 | 377.4万円 |
15年~20年未満 | 481.9万円 |
20年~25年未満 | 575.2万円 |
25年~30年未満 | 606.8万円 |
30年~35年未満 | 715.9万円 |
さらに、「10年~15年未満」になると377.4万円、「15年~20年未満」は481.9万円と勤続年数が長くなるほど着実に給料が上がっていることがわかります。
職場によって待遇は変わりますが、全体としてみれば、病院・クリニックに就職後は勤続年数が上がれるにつれて年収額が上昇しています。
新卒として待遇・処遇面で問題のない施設に就職できたなら、同じ職場に勤め続けることで収入アップが期待できるでしょう。視能訓練士は専門技能が求められる専門職ですが、勤続年数と収入額に高い相関関係があるようです。
視能訓練士が給料を上げる方法って?
1.学会に参加して技能を磨く
年収を増やすためのポイントの1つが、視能訓練士としてのスキルを磨くことです。
視能訓練士を対象に行われている勉強会や研修に積極的に参加し、専門的技能・知識を向上させれば、勤務先での評価アップにつながり、転職時にも有利になるでしょう。
また、国内には日本視能矯正学会や日本弱視斜視学会など、視能訓練士の業務分野に関係する学術集会があります。それらの学会に積極的に参加し、最新の研究動向について知識を入れておくのもおすすめです。
こうした努力が、勤務先での評価向上、あるいは転職時の面接官からの高評価につながるでしょう。
2.福利厚生の充実した病院へ転職する
総合病院や大学病院、あるいは町のクリニックなど、視能訓練士の勤務先となる施設は多数あります。転職を重ねてこれら施設を渡り歩き、異なる医療機関で多様な経験を積み重ねている視能訓練士も多いです。
実は現在、視能訓練士の数自体が全国的に不足気味であり、有資格者に対する人材ニーズは高く、転職しやすい状況にあるといえます。
転職先としてどのような施設を選ぶかは置かれている状況によって変わりますが、給与アップを視野に入れて、公立の総合病院や大学病院への転職を志望する人も多いようです。
これら大型病院では、待遇はもちろんのこと、研修制度も充実している傾向があります。就職後に自分の技術・技能を高め、職場内あるいは次の転職時における評価を高め、さらなる給与アップを目指せるでしょう。