鍼灸師の給料を年齢や職場、都道府県ごとに徹底解説!

鍼灸師の給料を年齢別の平均給与から初任給、ボーナスなどを見ながら詳しく解説していきます。 理学療法士との給料の違いや雇用形態別、働く施設ごとの平均給料の違いも紹介。比較しながら鍼灸師の給料の実態に迫ります。 気になる給料アップのための方法も紹介していきます。

鍼灸師の給与相場(平均値)

1.年齢別、男女別の平均給与

鍼灸師の収入は経験や技術力によって大きく変わり、働き方にもよりますが、新人の場合だと月給換算で「10万円未満」や「10~15万円」「15~20万円」というケースも多いようです。

参考までに下の図表はあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の年齢別の平均給与を表したものになります。

年齢 平均月収
21~24歳 18.6万円
25~29歳 21.9万円
30~34歳 21.9万円
35~39歳 21.6万円
40~49歳 19.9万円
50歳以上 14.7万円
出典:「第5回あん摩マッサージ指圧師・はり師及びきゅう師免許取得者の進路状況アンケート調査報告書」(東洋療法学校協会) 時点

年齢が上がるにつれ給料も微増していますが、大きな変化は見られないことがわかります。歩合制で給与が支払われる鍼灸院で勤務すると、患者の指名が入って治療回数が増えていくほど、収入アップが期待できるでしょう。

ちなみに、こちらの表を視覚的にわかりやすいようグラフにすると下のようになります。

鍼灸師の年齢ごとの平均月収

また、男女別の平均給与は、男性鍼灸師は22.8万円、女性鍼灸師は16.8万円です。

鍼灸師の男女別の平均月収

現状、男性の方が高い傾向にありますが、近年少しずつ美容鍼灸、レディース鍼灸などのニーズが高まっていて、女性鍼灸師への需要も増えつつあります。

2.初任給

資格を取得して鍼灸院に初めて就職した新人鍼灸師の場合、月収は約15~18万円になるのが一般的です。

実際のところ、採用されてすぐの頃は、先輩の鍼灸師から仕事について教えてもらう研修期間や下積み期間と捉えられていることが多く、その場合、給与は低めに設定されます。

もし見習いという立場で修業する場合、学習させてもらう立場であることから、無給になることもあるようです。

しかし、勤務先の先輩や院長に認められ、仕事ができると判断されれば、昇級して給与もアップしていくでしょう。収入を上げるためには、まずは1人前の鍼灸師を目指して、養成学校では学びきれない実地での経験を積み上げていく必要があります。

3.手取り

鍼灸師の手取りのイメージイラスト

東洋療法学校協会による「第5回 あん摩マッサージ指圧師・はり及びきゅう師 免許取得者の進路状況アンケート調査報告書」によれば、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師の免許を持つ人の平均給与は約20万円です。

そこから所得税や住民税などの税金、さらに年金保険料や健康保険料などの社会保険料が引かれるので、受け取れる手取り額は平均で10数万円と考えられます。

ただし、これらはあくまで平均値ですので、勤続年数が高く、指名の多い熟練の鍼灸師であれば給与が、30万円~55万円以上になってきます。その場合、手取り額も相応に高額になるでしょう。

4.ボーナス

年収には月給だけでなくボーナスも含まれます。しかし鍼灸師の場合、勤務先によってはボーナスが出ない場合もあるので、就職の際は事前にその点を確認しておきましょう。ボーナスが出る場合でも、支払い基準は勤務先ごとに違います。

新人として働く場合ならば、少額であることを覚悟する必要もあるでしょう。

しかし、ある程度鍼灸師としてのキャリアを積み、そのうえで収入アップを目指して転職を考える場合は、ボーナスの額はどのくらいなのか、そもそも支払われるのか、という点について確認が必要です。そのうえで、最終的に年収がいくらになるのかを計算しましょう。

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5.福利厚生

鍼灸院や病院、あるいはサロンなどに社員として勤務する場合、一般企業と同じく福利厚生を受けることができます。知名度の高い大きな事業所・施設であれば、福利厚生の制度も充実しているのが一般的です。

ただし、鍼灸院の場合、規模の小さい個人経営で運営されていることも少なくありません。その場合、福利厚生がきちんと整っていない場合もあるため、その点は就職・転職時に院長に確認を取りましょう。

院長自身が、初めて従業員を雇うなどの理由で福利厚生に関する知識を十分に持っていないことも考えられるので、その点について不安を感じた場合は、直接相談することをおすすめします。

6.ほかの医療系資格との給与比較

柔道整復師との比較

柔道整復師の給料のイメージイラスト

柔道整復師も国家資格であり、厚生労働大臣が指定する養成学校を卒業することで国家試験の受験資格を得ることができます。

平均年収という点では、鍼灸師が約350~450万円なのに対し、柔道整復師は400~600万円ほどで、やや柔道整復師の方が高くなっています。

しかし、これはあくまで平均値であり、鍼灸師も実務経験や腕前次第でいくらでも収入は伸びますし、柔道整復師も新人時代は収入が安めです。

あん摩マッサージ指圧師との比較

あん摩マッサージ指圧師とはあん摩、マッサージ、指圧などの手法を用いて、患者の体の不調を緩和させる専門職です。

こちらも国家資格なので、所定の養成学校を卒業し、国家試験に合格しなければ、あん摩マッサージ指圧師として業務を行うことはできません。

あん摩マッサージ指圧師の場合も、基本的に働き方や勤務先、本人の経験・技術によって収入は変動します。ただ、平均年収としては300万~400万円ほどで、鍼灸師よりもやや低めです。

理学療法士との比較

理学療法士とは、ケガや病気により身体機能が低下した人に対して、「座る・立つ・歩く」といった基本動作能力の維持・回復を目指してリハビリを行う専門職です。

国家資格であり、理学療法士として活動するには養成学校などで所定のカリキュラムを学習し、そのうえで国家試験に合格する必要があります。

理学療法士の平均年収も勤務先・経験などによって変動しますが、平均値としては400万円前後です。全体としてみると、鍼灸師よりもやや高めといえます。

雇用形態別の収入一覧表

下の表は、雇用形態別の鍼灸師の給与相場となります。

正社員 年収330万円~400万円前後
パート、アルバイト 時給940~1,100円

1.正社員の場合

鍼灸院などに正社員として勤務する場合、平均的な年収は330万円前後~400万円前後です。

ただしこれはあくまで平均値で、同じ正社員でも新米鍼灸師とベテランの鍼灸師とでは収入額は大きく変わります。勤続年数を重ね、スキルを磨いていくことで、年収額もアップしていくでしょう。

なお、正社員の給与形態としては、毎月所定の給料がもらえる「固定給」が一般的といえますが、鍼灸院・医療機関の中には「歩合制」を採用している場合もあります。

歩合制とは、個人の成果によって給与額が決まる成果報酬型の給与制度のことです。鍼灸師の場合、患者からの指名数など実績が分かる数値を参考にし、その内容に基づいて給与額が決まります。

2.パート、アルバイトの場合

鍼灸師がアルバイトとして働く場合、時給の相場としては940~1,100円ほどです。決して高い時給とはいえませんが、心身を酷使する仕事内容ではないため、女性や中高年の方でも安心して働けます。

特に、子育て中の主婦・主夫の方だと、空いた時間で気軽に勤務できるのでお勧めの働き方といえます。例えば幼稚園・保育園のお迎えの時間までのみ勤務したい場合など、時間に融通を聞かせながら給与を得ることができます。

また、扶養内で働きたいという主婦・主夫の方にとっても、鍼灸師のアルバイトは働きやすいです。時給の良いアルバイトはほかにもあるでしょうが、未知の仕事を一から覚えていくのは大変。取得した国家資格を活かし、自信を持って取り組める業務を行うのが得策といえます。

都道府県ごとの平均給与額

1.給料が高いのは東京

鍼灸師の収入を考える際、知っておくべきポイントの1つが、都道府県ごとに給与額に差があるという事実です。

年収が高めなのは大都市で働いている鍼灸師で、例えば東京都や千葉県、大阪府などでは、平均で約370万円。人口が多い地域は地価や物価が高めであるため、全体としてみると月給・時給が高めになる傾向があります。

ただ、注目すべき地域なのが「四国」です。四国では全体的に鍼灸師の平均年収は高めで、愛媛県や徳島県、香川県でも大都市圏と同様、370万円前後となっています。

2.給料が安いのは宮崎県

鍼灸師の平均年収が高めである地域がある一方で、低めとなっている地域もあります。例えば北海道・東北地方だと340万円弱、甲信越・北陸地方だと350万円前後、九州・沖縄地方だと360万円前後です。

都道府県ごとに平均年収を見た場合、特に低めであるのが宮崎県や秋田県です。これらの県の場合、平均年収は約300~320万円ほど。首都圏の平均年収よりも50~70万円も安いです。

もちろん、これはあくまで平均額であり、鍼灸師本人の実務経験や技術によって待遇は変わってきます。

しかし、地域間で多少の収入差があるのは間違いなく、実際に就職・転職を考える場合は、この点を念頭に入れておくと良いでしょう。

職場、働き方ごとの平均給与額

1.治療院や病院で働く場合

治療院や病院で働く鍼灸師のイメージイラスト

治療院や病院のような医療機関で勤務スタッフとして働く場合、平均年収は300~400万円が相場です。独立開業してある程度成功したというケースに比べると、収入は低めといえます。

しかし、毎月決まった給与を得ることができるので、ご家庭を持ち安定した収入を望みたいという方には適した働き方です。

ただし勤務スタッフであっても、勤続年数の長い人と新人とでは収入に大きな開きがあります。また、固定給か歩合制なのかによっても、収入のあり方は変わってくるでしょう。

歩合制であれば、経験・技術が評価されて多くの患者を担当した場合、その年収は高額です。スキルを磨き、たくさんの患者から指名されるよう努力を続けることが、更なる収入アップにつながります。

2.チェーン店の店長として働く場合

現在、鍼灸院チェーン店が全国各地にありますが、鍼灸師の有資格者であれば、それら鍼灸院の院長になることもできます。顧客数にもよりますが、多くの利用客が訪れるようになれば月給50万円以上に達することもあるようです。

ただし実務未経験でいきなり店長として店を任されることは少ないので、まずは店舗勤務、もしくは自分のお店で経験を積み、就職・転職の際に評価されるような実績・技術を得る必要があります。

また、チェーン展開している店舗の場合、営業方針が本部で定められていることが多く、自分で自由に店舗の運営・営業を行うことはできません。独立開業する場合ほど高度なマネジメント能力は求められませんが、その分、自分の意思で行えることは限られています。

3.経験年数ごとの収入推移

鍼灸師として鍼灸院に勤務し始めたばかりの20代の新人の場合、平均月収は20万円に届かず、年収も200~300万円台に留まるのが一般的です。

しかし、勤続年数をアップさせていき、経験を積み重ねることで昇給が見込めます。さらに、鍼灸師としてベテランの域に到達し、独立開業して成功を収めれば、さらに収入は高くなるでしょう。

最も平均年収が高い50代になってくると、平均年収は550~600万円ほどまでアップしてきます。開業することで収入アップを見込めるため、現在鍼灸師として働いている方、あるいはこれから鍼灸師として目指す人の中には、独立開業を目標としている人が多いです。

鍼灸師が給料を上げる方法って?

1.ほかの資格を取得して転職する

鍼灸師の転職のイメージイラスト

「はり師・きゅう師」という国家資格以外にも業務上役立つ資格を取得すれば、収入アップを見込めます。

特に、揉みや指圧などの方法で患者の不調を改善させる「あん摩マッサージ指圧師」、骨折や脱臼、捻挫などの外傷を治療する「柔道整復師」などは、対応できる業務の幅が広がり、収入増につながりやすいです。

これらは国家資格であるため、あん摩マッサージ指圧師や柔道整復師として働くには、所定の養成学校に通学し、資格試験に合格する必要があります。

ほかにも、国家資格ではないものの、知識・スキルを得ることができる整体師やカイロプラクターなどの民間資格の取得もおすすめです。これらはスクールに通うだけで取得できるものが多く、働きながらでも資格を得やすいでしょう。

2.独立、開業する

はり師・きゅう師は開業権のある国家資格であるため、資格取得後、いったんは鍼灸院・病院などで勤務するものの、ある程度経験を積んだのちに独立開業をする人は多いです。

独立開業を行う理由は鍼灸師によって異なるでしょうが、やはり大きな要因となるのが収入増。独立開業してお得意様を多く獲得できれば年収1,000万円以上も夢ではありません。

例えば、勤務スタッフ時代に多くのお得意様を作り、そのうえで独立開業を行えば、ある程度の収入を見込んだうえでの独立も望めます。

しかし、店舗運営をすべて自分で行う必要があるため、鍼灸師としての技術だけでなく、経営・運営能力も必須です。

例えば、料金設定1つをとっても、高くするほど患者1人あたりの売上は増えますが、その分、患者は「もっと安いお店に行こう」と考え、利用者数が減ってしまうことも考えられます。適正な料金はどのくらいなのかを、自分で判断して決める必要があるわけです。

さらに自分で院を運営していくわけですから、店舗の賃料や光熱費をはじめ、各種諸経費もかかります。成功すれば収入は大きいですが、自分自身への負担・責任が大きくなるのが独立開業という働き方です。

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