作業療法士の給料は安い?年齢、職場ごとに徹底解説!

この記事では、作業療法士の給料を年齢別・男女別の平均給与から初任給、ボーナスなどを見ながら詳しく解説していきます。 他の医療職との給料の違いや都道府県、雇用形態別、働く施設ごとの平均給料の違いも紹介。比較しながら作業療法士の給料を見ていきます。 さらに、気になる給料アップのための方法も紹介しています。

作業療法士の給料相場(平均値)

1.年齢別・男女別の平均給与

厚生労働省の「平成30年賃金構造基本統計調査」によると、作業療法士の平均月収は男性約29.2万円、女性約27.7万円です。

また、賞与などそのほかの特別支給額は男性で年間約66.2万円、女性66.1万円です。理学療法士を含めた数字ですが、ほぼ実態を表していると考えられます。

     
年齢 男性 女性
20~24歳 23.5万円 23.9万円
25~29歳 25.3万円 24.8万円
30~34歳 28.7万円 26.1万円
35~39歳 29.6万円 27.7万円
40~44歳 32.2万円 30.3万円
45~49歳 33.9万円 30.6万円
50~54歳 35.9万円 33.5万円
55~59歳 34.9万円 36.1万円
出典:「平成30年賃金構造基本統計調査」(厚生労働省) 時点

年齢別の給与のピークは男性だと50歳から54歳で35.9万円、女性は55歳から59歳で36.1万円。男女とも作業療法士は50代の給料が高くなっているのがわかります。

こちらの表をグラフにすると下のようになります。

作業療法士の年齢別・男女別の平均給与

現役で活躍する作業療法士は新卒採用時期にあたる20歳から24歳の給料が一番安く、男性23.5万円、女性23.9万円。若い世代で男女差はほとんど見られません。50代にかけてゆるやかに上昇していって、60歳前後を境に減少していきます。

2.作業療法士の初任給

初任給はどのくらいのイメージでしょうか。「平成30年賃金構造基本統計調査」によれば、新卒世代の集中する20~24歳の作業療法士・理学療法士の平均月収は男性で23.5万円、女性で23.9万円です。

年間賞与などの特別給与額は男性で28.9万円、女性で55.2万円。年収として計算すると男性は約322万円、女性は352万円と開きがあります。

初任給は、勤務する事業所の経営規模や待遇、地域などにも左右されるので、あくまで目安。といっても作業療法士になれば、新卒初任給から月給20万円を超えるイメージです。

3.手取り

平均400万円前後が、全年齢と男女を含めた作業療法士の平均年収です。平均月収は27万円から29万円。月給とは別でボーナスなど特別に支給される金額は66万円。

ただし、この金額はあくまで総支給額。手取りはまた異なります。住民税や所得税、社会保険料などが引かれるため、純粋に銀行口座に振り込まれる手取り額は2〜3割程度低くなるからです。

未婚の独身者の場合、年齢にもよりますが、手取り月給は22万円から24万円程度。ボーナスは45万円程度が相場といえます。

ちなみに、作業療法士のボーナスは全産業の労働者に比べてやや低めです。医療従事者で資格の必要な仕事のため、月給は安定している一方で、ボーナスで1年の収支を取り戻そうとすると厳しくなる場合も考えられます。

4.ボーナス

作業療法士のボーナスのイメージイラスト

作業療法士のボーナスは企業規模によって違いが見られます。まず。10人〜99人の従業員数の企業では、賞与は男性約59万円、女性55万円。

100人〜999人では男性約65万円、女性66万円。そして1,000人以上は男性約67万円、女性約75万円。春夏2回に分けて支給される場合、シンプルに計算すれば1回あたり30万円から25万円程度です。

10人以上の企業をまとめた数字を見てみましょう。作業療法士全体のボーナスの平均がわかります。男女ともに約66万円。年齢別では男性は50代のボーナスがピーク。50〜54歳で約108万円、55歳〜59歳で約110万円が支給されます。

一方で、女性の年齢別ボーナスのピークは55歳〜59歳。約132万円となっていて、男性のピーク時の金額より22万円前後も高い金額です。

5.福利厚生

作業療法士の活躍する場は医療機関や介護施設などが多いため、一般的な産業よりも待遇が手厚いケースが大半です。

作業療法士の資格手当をはじめ通勤手当や扶養手当、住宅手当、残業手当や休日出勤手当が充実している職場が一般的です。

また、休暇制度も年次有給休暇のほかに独自のリフレッシュ休暇や慶弔休暇を設けている場合が多く、待遇面で働きやすい職場環境となっています。

なお、入院病棟を持つ総合病院や基幹病院なら、看護師をはじめ従業員のための育児施設を設けていたり、シフト制で出産や育児、家事などをスタッフが調整しながら業務を進めている職場も。

とくに国公立や私立でも規模の大きな病院ほど、手厚い福利厚生を受けられるはずです。

他の医療職との給料の違い

他の医療職との給料の違い

1.理学療法士

職場でチームとなって仕事を進めることが多い理学療法士はリハビリスタッフとして、ほぼ給料や待遇は変わりません。

厚生労働省の「平成30年賃金構造基本統計調査」でも、作業療法士は理学療法士とまとめて扱われています。それほど、給与ベースがほぼ同じレベルということでしょう。

平均年齢32.9歳で勤続年数6.1年の作業療法士の平均年収は約400万円。月給約29万円、年間賞与は約66万円です。

ちなみに、作業療法士は理学療法士より女性が多いため、キャリアの積み方や管理職になるかどうかなどが収入に影響を与えます。

男性比率の高い理学療法士のほうが実際の給与は高めと考えられます。男女で年収ベースで約20万円の差があるのが特徴です。

そもそも理学療法士との違いは?

リハビリの現場では、作業療法士と理学療法士、これに言語聴覚士の3つの資格スタッフが一丸となって患者さんのケアに当たります。

作業療法士は日常的な動作の訓練や家庭の戻ったときの食事や入浴、移動などがスムーズになるような訓練が中心。

一方で、理学療法士は患者さんの障がいに合わせた運動療法や物理療法を行って、日常生活の動作をしやすくしていきます。特に立つ・座るや起き上がりといった基本動作のほか、寝返りや歩き方の調整など、リハビリ内容はさまざまです。

入院施設があってリハビリ室のある大きめの病院には、理学療法士と作業療法士はセットで勤務するケースが目立ちます。

病気やケガで障がいがあったり、身体機能が低下した高齢者のリハビリに欠かせない資格です。

2.看護師

日本看護協会がまとめた2013年のデータによると、看護師の給料は総支給額で月収で平均約35万円、基本給は約25万円です。

基本給と手当などを含む総支給額との差が10万円あるのは、看護師には夜勤手当や資格手当をはじめ経験や能力に応じて昇給制度がしっかり整えているからと考えられます。

また、看護師は看護師長や認定看護師など役職や上位資格を取得するとさらに役職手当や資格手当が期待できます。

看護師は、患者の命を預かるハードな仕事です。体力面や精神面で辛い場面も多く、大きな責任が伴います。

入院病棟のある病院では、夜勤や準夜勤など交代制で深夜・早朝に働くことも。その分、まとまった手当は付きますが、仕事内容が異なるため、作業療法士の収入とは差が開いています。

3.介護福祉士

介護現場で中心的に活躍する介護職員の資格に介護福祉士があります。

「平成30年度処遇状況等調査結果」によると、介護職員全体の年齢別平均年収は40代から50代がピーク。男性は40〜49歳で平均月収約34万円。女性は50〜59歳で約30万円。

20代から50代にかけては女性より男性の方は多い年代で3万円程度、少ない年代で3万円ほど高くなっているのも特徴です。

作業療法士の平均月収のピークも40代から50代にかけてですが、介護職員に比べると男女とも8万円程度高め。介護業界より給与面では優遇されている状況です。

都道府県ごとの平均給料

1.給料が高いのは東京

作業療法士の給料を都道府県別に見ていくと、東京都が高い給与水準となっています。

実際、みんなの介護求人に掲載されているデイサービスやデイケア、訪問看護、介護老人保健施設の求人では、月給21万~35万円、月給27.5万~37.5万円で募集している求人もあります。

パート、アルバイトの場合でも時給1,800円と高時給な求人が目立ちます。施設数の多さに加え、求人数も多いのが特徴です。

賞与や通勤手当の有無など施設によって福利厚生はさまざまなこともあり、施設ごとの特徴も吟味する必要があります。

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2.給料が安いのは島根県

一方、給料が安いのは島根県で平均300万円ほどです。

みんなの介護求人に掲載されている訪問看護や訪問リハビリ、住宅型有料老人ホームの求人では、月給16.8万~22.3万円と東京都と比べて月額で5~10万円ほどの差があります。

40代、50代歓迎の求人や一度作業療法士の現場から離れ、ブランクがある人も歓迎している求人もあり、さまざまです。

雇用形態別の収入一覧表

正社員 24万〜30万円
パート、アルバイト 時給1,300円~1,700円

1.正社員

朝から夕方まで、またはシフト制など、1日8時間を目安にフルタイムで働きます。正社員での雇用の場合、経験や年齢をはじめ、施設の経営規模や福利厚生、都会や地方かなど地域によっても相場に差があるのが特徴です。

正社員で働くと、雇用が安定しているのが最大の魅力です。パートや派遣の場合は、短期間の契約が終わると更新がないケースもありますが、長期にわたってじっくりキャリア形成ができるのも常勤ならではの魅力です。

月給制の事業所が大半で、基本給に応じて賞与も夏と冬もらえます。

みんなの介護求人の求人情報を見てみても、正社員の月給は約24万〜30万円の施設など、さまざまです。

2.パート、アルバイト

パートや派遣、契約社員など、1日数時間の短時間で働いたり、雇用期間が短期の働き方もできます。主婦で家事や育児をしながら仕事をしたい、他にもかけもちで仕事をしているといった人にぴったりです。

また、もともと介護業界で働いていて結婚や出産、転職を機に現場を離れ、もう一度介護へ転職したいときのお試しで働くこともできます。

非常勤は常勤に比べると雇用の安定度は高くないものの、ワーク・ライフ・バランスが取りやすく、自分の体力や時間、扶養の範囲内で働けるのもポイント。

みんなの介護求人で非常勤の募集案件をチェックすると、時給1,300円~1,700円の給料の相場です。運営規模や仕事内容にもよりますが、作業療法士の時給レベルは介護現場でも高めといえるでしょう。

働く施設ごとの平均給与額

1.介護施設勤務

人材不足が叫ばれる介護業界では、全体的に作業療法士の給料は高めのケースが多いです。医療施設勤務の平均年収は350万円から450万円程度でしが、介護施設は運営母体や地域によって500万円を超える求人も目立ちます。

デイサービスや訪問介護、訪問リハで活躍する作業療法士は、人出が足りない介護業界では重宝されています。医療施設より体力的にも精神的にもハードな場面も多いですが、その分給料や年収に反映されているといって良いでしょう。

施設によっては管理職にならなくても、一般職員のままで作業療法士全体の平均年収を超えることも珍しくありません。介護施設は、介護に関心がある、高齢者や障がい者と関わりたいという作業療法士にはおすすめです。

2.福祉施設勤務

福祉施設で働く作業療法士のイメージイラスト

作業所や授産施設、デイサービスなど障害福祉や児童福祉関連の施設で働く作業療法士もいます。

年収の相場は250万円から400万円程度。作業療法士の平均年収より低い施設も多いのが特徴です。医療施設や介護施設で働くよりは、収入面がネックとなるでしょう。

福祉施設は公立やNPO法人が運営するなど、あくまで福祉サービスを提供するために運営されています。民間企業のように営利を目的としていないため、運営そのものが厳しい施設もあって、給与待遇で気になるところは多いでしょう。

障がい者や子供たちと触れ合う喜びは仕事のやりがいにつながりますが、もともと基本給も低めで昇給や賞与もまとまったものが見込めない就業先でもあります。福祉を通じての社会貢献と収入面とのバランスをどう考えるかが大切となります。

3.医療施設勤務

入院施設のある病院、整形外科などリハビリルームのある診療所やクリニックで多くの作業療法士が活躍しています。作業療法士の資格を持つ人のうち、およそ7割は医療施設で働いているというデータもあるほどです。

新卒で就職した作業療法士の多くは、こうした医療機関でスキルを磨いたり、患者とのコミュニケーションの方法を学んだりしながら、キャリアアップを図ることができます。

勤務者が多いこともあって、医療施設勤務の平均年収は作業療法士全体とほぼ同じレベルです。求人案件を見ると、350万円から450万円前後の施設が目立ちます。

年収は就職する医療施設の規模をはじめ年齢や経験、管理職かどうかにも左右されます。施設内で昇進していけば、基本給もアップ、役職手当も含めて年収600万円を超えることも少なくありません。

国立病院

国家公務員の作業療法士は、独立行政法人国立病院機構で働いています。国家公務員は給与規定で金額がはっきりしているのがポイント。

新卒時の基本給は4年制大学の卒業者で18.4万円、3年制の短大の卒業者で約17.3万円。給与額は、独立行政法人国立病院機構給与規定の俸給表に従って支給されます。

実際には、基本給に通勤手当や住居手当のほか、特殊業務手当や業績手当などがプラスされます。国家公務員は、経験年数が上がると俸給表の通りに昇給するのがメリットです。

精神科

精神科でも、病院やクリニックのリハビリルームで働く作業療法士が活躍しています。精神科勤務の作業療法士の給料も、作業療法士全体の平均年収350万円から450万円程度が目安です。

基本給に資格手当や住宅手当、時間外手当のほか、賞与が支給されます。ある精神科の求人案件を見ると、月給は約23万円から。想定される年収は320万円程度からスタートです。年収額はあくまで総支給額。手取り額は額面より2割程度少なくなります。

4.訪問リハビリ

訪問リハビリは常勤のほかパートで働くケースも多くなります。介護求人サイトを見ると、月給より時給で募集をしている訪問リハビリステーションが少なくありません。また、非常勤の作業療法士の時給よりやや高めになっています。

理由として、訪問リハビリの収入は訪問先1軒あたりで金額が設定されている場合が多いため。つまり、時給で表示されていても、実際には1軒訪問した場合でおおよその時給に換算しているというわけです。

ちなみに、みんなの介護求人の求人情報を見ると、月給20万円~の施設が多く、時給は1,500円〜1,700円といった求人も目立ちます。介護施設や医療施設で働く場合と同等あるいはそれ以上の給料が見込めるのが魅力です。

5.職場規模別の給料の違い

就業先の施設の運営規模で、給料はどのくらい変わってくるのでしょうか。

厚生労働省の「平成30年賃金構造基本統計調査」によると、作業療法士の場合、職場の従業員数10〜99人の平均月収は30.7万円、100〜999人で27.9万円、1,000人以上で約28.6万円となっています。

職場規模 平均給与額
10~99人 30.7万円
100~999人 27.9万円
1000人以上 28.6万円
出典:「平成30年賃金構造基本統計調査」(厚生労働省) 時点

なお、10人以上の従業員がいる企業全体の平均月収は男性29.2万円、女性27.7万円です。

このように、同じ作業療法士の資格で働いても、職場の規模の大きさによって数万円の差が開いているのがわかります。

作業療法士の昇給の状況

勤続年数ごとの収入推移

一般的な企業などと同じく、作業療法士が働く医療施設や介護施設などでも定期的な昇給があります。大半は年1回で、能力や実績も大切ですが、勤続年数で1年ごとに昇給していく施設がほとんどです。

ただし、作業療法士の昇給幅は小さい職場が目立ちます。というのも、他の産業に比べると新卒時の基本給と大きな差が感じられない場合が多いからです。

勤続年数 男性 女性
0年 23.3万円 23.6万円
1~4年 25万円 24.6万円
5~9年 27.6万円 25.7万円
10~14年 30.6万円 28.2万円
15年以上 36.4万円 31.3万円
出典:「平成30年賃金構造基本統計調査」(厚生労働省) 時点

年齢別の平均年収のピークは40代から50代ですが、新卒者が年収350万円程度からスタートしても400万円台にとどまっている人が目立ちます。手当や賞与でカバーしている施設もあるでしょうが、基本給が伸びづらい職種であるのは間違いないでしょう。

作業療法士の勤続年数ごとの収入推移

というのも、作業療法士の賞与額は施設によってかなりバラツキがあるのです。

厚生労働省のデータでは月収の2ヵ月程度が賞与の目安ですが、基本給が高い場合はボーナスが少ない、逆にボーナスが多くて基本給が少なめで昇給も難しいといった施設もあるなど、ライフステージが変化する中年以降、収入面で仕事を続けられるかどうか、大きなハードルになると予想されます。

そのため、作業療法士の収入をイメージするなら、勤続年数ごとの年収の変化を確認するのがおすすめです。就職活動や転職活動のときには、面接で月収だけでなく年収イメージも説明を受けておくと良いでしょう。

作業療法士が給料を上げる方法って?

1.管理職にキャリアアップする

管理職にキャリアアップする作業療法士のイメージイラスト

作業療法士で給料アップを図るなら、リーダーや施設長、幹部といった役職を目指す方法があります。

昇給があまり見込めない同じ職場で働き続けるなら、スキルや経験を積んで管理職になれば、役職手当はもちろん基本給そのものもアップされるからです。

ただし、作業療法士の職場は、本人の能力やスキル、頑張りよりも、勤続年数で評価されがち。昇進も年功序列で進められる職場が少なくありません。

したがって、現場での経験やスキルアップはもちろんですが、日頃から管理職に必要な経営や経理、リーダシップ術、さらに職場でのコミュニケーションを深めておくなど、あらゆるアンテナを張って努力する姿勢も昇進のために求められるでしょう。

2.転職する

年功序列の色合いが濃い作業療法士では、同じ職場で働き続けるより、思い切って転職したほうが大幅な収入アップにつながることも考えられます。

ある程度働いて、それなりに職場に貢献しているのに思うような評価がされないなら、自分の能力やスキルを発揮できるまったく別の職場を見つけるのもおすすめです。

特に介護施設の作業療法士は人手不足の中、売り手市場。転職活動も進めやすいはずです。

今の職場のメリットやデメリットを自分なりに整理したうえで、次の職場でどういった働き方をしたいのか、また、評価制度や昇進・昇給制度がどうなっているのかを注意しながら転職活動を進めると良いでしょう。

首都圏や関西圏など、大都市では作業療法士を求める施設が多いため、有利な条件で転職するチャンスが広がっています。

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