福祉用具専門相談員とは?仕事内容と必要な資格、就職先を解説

要介護状態になると、歩行や入浴など、日常生活でのさまざまな動作をサポートするための福祉用具が必要になる場合があります。 そういった用具選びの相談に乗り、適切な使い方をアドバイスするのが、福祉用具専門相談員の仕事です。 この記事では、福祉用具専門相談員になるための方法や、実際の業務内容、給与待遇や仕事のやりがいを紹介。 将来、福祉用具専門相談員の資格取得を考えている方は、ぜひ参考にしてください。

福祉用具専門相談員とは

福祉用具専門相談員とは、日常生活で福祉用具を使用する人に対して、選び方と使い方を説明するなどのアドバイスを行う専門職のことです。介護保険法に基づく指定を受けた福祉用具貸与・販売事業所では、常勤で最低でも2名以上の配置が義務づけられています。

介護保険制度の要介護認定を受けている高齢者の方は、持病や心身の衰弱など多様な症状を抱えています。

そのような方々に対して、担当のケアマネージャーと連携しながら本人に合った福祉用具を提案し、自立した生活を支援することが福祉用具専門相談員の役割です。

講習の修了者数は約2万7,000人

福祉用具専門相談員は試験を受けて取得する必要はなく、都道府県が指定している講習事業者が行う「福祉用具専門相談員指定講習」を受けることで資格を得ることができます。

福祉用具専門相談員指定講習の修了者数は、2015年時点で約2万7,000人です。

福祉用具専門相談員の仕事内容

福祉用具の使用方法、選び方のアドバイスのイメージイラスト

福祉用具専門相談員とは、介護が必要な高齢者や障がい者に、福祉用具の選び方や使い方などをアドバイスしたり指導したりする、福祉用具に特化した職種です。

また介護をしている家族から、福祉用具の購入ポイントや利用方法の相談を受けることもあります。

福祉用具専門相談員は、介護保険サービスのなかで活躍している資格職です。

福祉用具の知識や指導法に精通していて、介護を必要とする利用者の要介護状態や、障がいのレベル、生活環境などを総合的に判断してより良い福祉用具を選ぶ手助けをします。

福祉用具専門相談員の主な仕事には、以下の4つがあります。

  1. 選定相談
  2. 計画作成
  3. 適合・取扱説明
  4. 訪問確認(モニタリング)

それぞれの内容についてくわしく見ていきましょう。

1.選定相談

要介護者や障がい者の健康状態や介護が必要な生活環境を確認したうえで、生活介助や自立支援に向けた最適な福祉用具を選びます。

利用者やその家族だけでは気づかなかった、必要な福祉用具を紹介したり、さらに生活しやすくなるような福祉用具をおすすめしたり、利用者とともに本人にあった福祉用具を見つけるサポートをします。

2.計画作成

利用者から受けた悩みや課題を解決するための、福祉用具サービス計画を作成します。

これは、どのような福祉用具をどういった形で利用するのか具体的に書かれた書類です。

ケアマネージャーと協働が必須

福祉用具専門相談員は、利用者となる方の「ケアプラン」を基に用具の選定などを行います。

そのため、ケアプランを作成するケアマネージャーとも連絡を取り合い、ご本人の日常生活を本質的にサポートする用具を見極める必要があります。

住まいやサービス内容など、ケアマネージャーと相談しながら業務を進行するのも、福祉用具専門相談員の仕事の1つです。

3.適合・取扱説明

利用者とともに選んだ福祉用具を実際使用する場所へ持って行き、適したものを選べているか確認します。

また実際に設置してみて、利用者が使用したとき快適か、介護がしやすくなったかなどをチェックします。

続いて、利用者やその家族に福祉用具の使い方を説明します。

安全で介護に役立つ使い方をしてもらうために適切な利用方法を身につけてもらうことは、福祉用具専門相談員にとって非常に大切な仕事です。

4.訪問確認(モニタリング)

訪問確認は「モニタリング」とも呼ばれていて、利用者が福祉用具を適切に使っているかを定期的に確認します。

また交換や修理の必要がないかなど点検作業も行います。

福祉用具専門相談員になるには?

福祉用具専門相談員になるためには、都道府県知事が指定した研修事業者の実施する、福祉用具専門相談員指定講習を受講しなければなりません。

講習のカリキュラムは、合計7日間に分けて進められます。

1日目はオリエンテーションの後、福祉用具の役割や福祉用具専門相談員の仕事内容、介護保険制度や介護サービスについて学びます。

2日目は高齢者の健康や日常生活について理解を深めます。

3日目以降は介護技術や生活環境に対応した住宅改修について、さらに福祉用具の特徴や使い方、貸与計画の作成方法についてなど、利用者が使いやすくなるようにさまざまな観点から幅広く学びます。

カリキュラムの内容は以下の通りです。

  1. オリエンテーション
  2. 福祉用具の役割
  3. 福祉用具専門相談員の仕事内容
  4. 介護保険
  5. 介護保険サービス
  6. 高齢者の健康や日常生活
  7. 介護技術
  8. 生活環境に対応した住宅改修
  9. 福祉用具の特徴や使い方
  10. 貸与計画の作成方法

1.講習後は修了評価試験を受験する

講習の最後には約1時間の筆記試験もあり、合格してはじめて福祉用具専門相談員の資格を取得できます。

これまでの7日間のカリキュラム内容から出題されるので、知識を整理しておけば十分に対応できる内容です。

2.ほぼ全員が資格を取得

講習後の修了試験は、もし不合格でも補講、レポート提出で合格させている学校もあるようです。

そのため、福祉用具専門相談員はほぼ全員が取得できる資格です。

受講するために必要な資格や条件も特にないため、指定講習を修了するだけで福祉用具専門相談員の資格が取得できます。

福祉用具専門相談員の資格は、介護保険サービスで利用される福祉用具のレンタルや販売を行っている事業者で働いている人や、これから介護業界や福祉業界に就職を目指している人などが多く取得しています。

3.介護・看護関連の国家資格で受講不要に

福祉用具専門相談員になるためのルート図

福祉用具専門相談員の指定講習を修了していなかったとしても、資格保持者と同じ業務を行うことができる場合があります。

それは、医療や介護の現場で働く国家資格の保有者です。

具体的には次のような国家資格を持っていると福祉用具専門相談員とみなされるため、介護保険の指定する福祉用具の貸与や販売を行う事業者で働くことができます。

  • 看護師
  • 准看護師
  • 保健師
  • 理学療法士
  • 作業療法士
  • 義肢装具士
  • 介護福祉士
  • 社会福祉士

なお、ホームヘルパー1級や2級、介護職員基礎研修、介護職員初任者研修の資格では福祉用具専門相談員の業務は行えません。

これらの資格の保有者は指定講習を受講する必要があります。

福祉用具専門相談員の給料はいくら?

一般的な福祉用具専門相談員の年収の相場は、280万円〜350万円ほどです。一般の介護職員とそれほど大きく変わりません。

福祉用具の貸与・販売事業所には、2名以上の福祉用具専門相談員を配置しなければなりませんが、専任で業務を行っているケースは多くなく、営業職や事務職と兼任して勤務しているケースが大半です。

給与や待遇の良い就職先を探すのなら、大手企業が運営する介護事業所や福祉用具メーカー関連の会社を選ぶと良いかもしれません。

就職後、経験やスキルを積んでセールスの評価が高くなれば、給与アップや昇進の可能性もあります。

将来的に事業所の管理職になれば役職手当をもらえますし、いずれ独立開業の道もあります。

このほか、看護師や理学療法士、作業療法士、介護福祉士、社会福祉士といった医療・介護関連の国家資格を持っていると、福祉用具専門相談員の業務が行えるため、給与や待遇で有利になるかもしれません。

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福祉用具専門相談員の就職先は?

1.福祉用具貸与・販売事業所

福祉用具貸与などの場で活躍が可能なイメージイラスト

福祉用具専門相談員の主な勤務先は、福祉用具の貸与や販売を扱っている事業所です。

介護保険の法律によって、 こういった事業所には福祉用具専門相談員を2名以上配置する義務があるためです。

なお、一般に福祉用具を取り扱う事業所には、介護保険の対象になっている福祉用具のレンタルや販売を行う事業所をはじめ、以下のような場所があります。

  • 訪問介護事業所
  • スーパーやホームセンター
  • 百貨店などの介護福祉用品コーナー
  • ドラッグストア

このように、福祉用具専門相談員の活躍の場が広がっている理由は、高齢者や障がい者で介護福祉用品を必要としている人たちが増えていること、家族が介助する際に役立つ福祉用具を実際に店頭に訪れて選びたいという人が増えていること、などが考えられます。

スーパーやショッピングモール、ドラックストアのなかには、介護や福祉用具のコーナーを拡大して、地域の介護のニーズに応えている店舗も多く見られるようになりました。

2.工務店やリフォーム業者、住宅メーカー

このほか、福祉用具専門相談員の大切な業務の1つである、住宅リフォームや改修工事に関する職場でも、専門の知識や経験を活かすことができます。

地域の工務店やリフォーム業者などで、介護を必要とする人たちに適した手すりやバリアフリー化をアドバイスするニーズも高まっています。

ちなみに、工務店や住宅メーカーでさらに活躍の場を広げたいときは、福祉住環境コーディネーターの資格もお勧めです。

福祉用具専門相談員と隣接する分野の知識が問われる資格なので、介護や福祉のさらに専門的な観点から、リフォームプランや改修工事の提案が可能となるでしょう。

高齢者増で将来的な需要は拡大

福祉用具が必要な高齢者が増えており、必要な職種のイメージイラスト

介護が必要な人や障がいを持つ人の周りには、車椅子や杖、手すりや段差解消グッズなど、日常生活を支えるためのさまざまな福祉用具が活躍しています。

しかし、車椅子1つを取っても、身体機能や用途、使用する環境などによって多くの種類に分かれており、介護に詳しい人でなければ迷ってしまうほどです。

また、利用者に合わない福祉用具を選んでしまったり、使い方を間違えたりすると、日常生活をサポートするはずの福祉用具のせいで不便さが増したり、体調に影響が出る可能性も生まれます。

多彩な福祉用具の知識と技術、幅広い商品や介護知識から、利用者本人にベストな福祉用具を提案するのが、福祉用具専門相談員の最も大切な仕事です。

加齢や病気、怪我の影響で、身体機能の低下や損傷を受けながら生活していく高齢者や障がい者は、今後ますます増加すると予想されます。

そんなとき、生活の支えになる福祉用具を適切にアドバイスして、安全かつ安心して利用できる方法を教える福祉用具専門相談員は、将来的に介護の現場で活躍の場を広げられるでしょう。

また、福祉用具の貸与や販売を行う事業所は、2名以上の福祉用具専門相談員の配置が不可欠ですので、介護保険制度が大きく変わらない限り、事業所における一定数の求人ニーズは見込めます。

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