介護の資格・職種とは
介護系職種の給料
介護の仕事
介護職とひと括りに言っても、職種や年齢、立場によって給料はさまざま。
まずは介護業界の基礎的な給料データから見ていきましょう。
「平成29年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、2017年の介護職員の平均給与額は次の通りでした。
月給 | 29万7,450円 |
---|---|
日給 | 20万9,590円 |
時給 | 20万3,480円 |
一般的な介護職員の月収の相場は16万円~30万円ほど、年収の相場は240万円~350万円ほどです。また、パートの場合の時給の相場は800円~1,500円ほどです。
介護業界の給料額は働く施設の種類や規模の大きさ、地域、保有資格によっても大きく異なってきます。
「平成29年度 介護従事者処遇状況等調査結果」によると、2017年の介護職員全体の初任給の平均額は23万2,460円でした(平均年齢37.5歳)。
介護職員が働く場所として、さまざまな種類の介護施設がありますが、平均給料と同様に初任給も働く施設によって変動します。また、保有資格によって手当などが付くことがあるため、資格の有無も初任給に影響します。
同調査では、2017年の介護老人保健施設(老健)での初任給の平均は24万2,690円、通所介護事業所(デイサービス)では21万340円で、これら2種類の施設の平均初任給を比較しても、3万円ほどの差が出ていることがわかります。
会社員など月給をもらう場合、「額面」と「手取り」という言い方をよくします。「額面」とは「額面給料」とも呼ばれていて、基本給に各種手当がプラスされた総支給額のことです。
一方、「手取り」とは「総支給額=額面給料」から源泉徴収で差し引かれる控除金額(税金や社会保険料など)を計算したあと、実際に給料振込される金額を指します。
手取りの金額は額面給料の70%〜80%になるケースが大半です。
以下のグラフは「平成29年度介護従事者処遇状況等調査結果」を元に介護職員の年齢、男女ごとの平均給料額の推移を表したものです。
このグラフを表にすると以下のようになります。
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
29歳以下 | 28万3,480円 | 27万3,210円 |
30~39歳 | 32万2,880円 | 29万2,340円 |
40~49歳 | 33万6,720円 | 29万5,720円 |
50~59歳 | 30万7,720円 | 29万4,800円 |
60歳以上 | 28万1,820円 | 26万9,400円 |
上の表を見てもわかるように、40代までは年齢が上がると平均給料額は上昇しますが、それ以降は給料額が下がる傾向が見られます。
また、性別によっても給料額に差が見られます。
順位 | 職種 | 平均給与額 |
---|---|---|
1 | 介護施設管理者 | 27万4,431円 |
2 | 言語聴覚士 | 26万4,114円 |
3 | 保健師 | 26万2,908円 |
4 | 主任ケアマネジャー | 26万746円 |
5 | 理学療法士 | 26万429円 |
資格・職種名 | 雇用形態 | ||||
---|---|---|---|---|---|
正社員 (月給) |
契約社員 (月給) |
パート・ アルバイト (時給) |
|||
介護職 | 介護福祉士 | 19.7~ 23.8万円 |
17.7~ 20.4万円 |
1,067~ 1,251円 |
|
介護職員 初任者研修 |
18.6~ 22.7万円 |
17.1~ 19.5万円 |
1,075~ 1,283円 |
||
介護福祉士実務者研修 | 19.6~ 23.3万円 |
17.7~ 20.4万円 |
1,099~ 1,321円 |
||
ケアマネジャー | 21.8~ 25.9万円 |
20.8~ 23.9万円 |
1,247~ 1,403円 |
||
看護師 | 准看護師 | 21.7~ 26.8万円 |
20.6~ 24.1万円 |
1,347~ 1,536円 |
|
ソーシャル ワーカー |
社会福祉士 | 20.5~ 25.1万円 |
19.3~ 22.0万円 |
1,121~ 1,262円 |
|
リハビリ 専門職 |
理学療法士 | 23.5~ 28.5万円 |
22.2~ 26.0万円 |
1,535~ 1,774円 |
介護福祉士の月収は全国平均で20万円〜25万円前後。年収では300万円〜370万円前後です。経験や年齢、勤務先の施設などで収入は変わります。
東京都など大都市圏では月収30万円前後の給料モデルで募集している老人ホームもあります。なお、初任者研修修了者や実務研修修了者より介護福祉士はニーズが高いため、よりよい収入が見込めます。
厚生労働省の「平成26年度 介護労働実態調査」によると、平均月給は21万3,721円、日給14万8,570円、時間給の人は9万4,053円となっています。
月収17万円〜25万円程度、年収240万円〜350万円程度が相場です。同じ資格で働いていても月収ベースで8万円前後の差しか見られないのが初任者研修の特徴といえます。
厚生労働省の「平成26年度 介護労働実態調査」によると、実務者研修修了者の平均月給は23万3,378円、日給制の人だと16万2,980円、時間給の人は12万3,537円となっています。
月収は17万円〜28万円程度、年収の相場は280万円から360万円前後となります。
介護福祉士や介護支援専門員に比べると平均年収の幅が小さいのが特徴です。
ケアマネジャーの月収は20万円から40万円と幅があるのが特徴です。
年収では30万円から480万円ほど。勤務先の施設の種類や本人の年齢、経験などの影響も大きいのが理由です。
厚生労働省が発表した「平成29年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、月給・常勤の場合、平均賃金は2017年9月には34万8,760円と、2016年9月の33万9,400円から1万円ほどアップしています。
日本看護協会が発表した「2012年 病院勤務の看護職の賃金に関する調査」によると、看護師の平均月収は額面月収で35万2,157円、手取り月収で25万4,583円でした。
また、賞与額は平均89万1,909円、年収の相場は約500万円となっています。医療職の中でも資格のステータスが高く、夜勤がある職場では夜勤手当が付くので、勤務体系は給料に大きく影響します。
厚生労働省が発表した「令和元年賃金構造基本統計調査」によると、准看護師の平均月収は28万2,400円、そのうち手当などが含まれない所定内給与額は26万1,900円です。
また、賞与額は平均63万6,000円となっています。
看護師とほぼ変わらない看護業務を行っていますが、国家資格である看護師は主体的に看護業務に取り組める立ち位置であることから、准看護師は看護師に比べて平均給料・年収ともに少し低い水準となっています。
月収は22万円から30万円前後、年収は320万円から550万円前後が平均です。勤務する事業所や本人の年齢、経験などによって、収入は大きく異なります。
厚生労働省が発表した「平成26年度 介護労働実態調査」によると、月給制の社会福祉士は平均で約26.4万円、日給制は約14.9万円、時間給は約11万円となっています。
理学療法士の月収は34万円、年収は400万円前後が平均です。本人の年齢や経験、勤務する事業所などによって、収入は大きく異なってきます。
厚生労働省が発表した「平成26年度 介護労働実態調査」によると、月給制の理学療法士は平均で約26.4万円、日給制は約14.9万円、時間給は約11万円となっています。
順位 | 施設名 | 平均給与額(常勤) |
---|---|---|
1 | 特別養護老人ホーム | 35万0,430円 |
2 | 介護老人保健施設 | 33万8,920円 |
3 | 特定施設入居者生活介護 | 32万2,020円 |
4 | 介護医療院 | 31万2,600円 |
5 | 訪問介護 | 30万6,760円 |
介護サービスの種類 | 就業形態(月給) | |
---|---|---|
常勤 | 非常勤 | |
特別養護老人ホーム | 35万430円 | 26万円 |
介護老人保健施設 | 33万8,920円 | 27万5,300円 |
介護療養型医療施設 | 30万6,420円 | - |
訪問介護 | 30万6,760円 | 17万4,150円 |
デイサービス | 28万600円 | 19万480円 |
特定施設入居者生活介護 | 32万2,020円 | 24万4,250円 |
グループホーム | 28万7,770円 | 20万7,980円 |
社会福祉法人や地方自治体が運営している特別養護老人ホーム。利用者からは比較的低料金で手厚いサポートが受けられるので、人気がある施設です。
特別養護老人ホームの平均月収は34万2,230円。手取りは約27万3,000円となっています。
平均年収は約410万円で、介護事業所の中で最も高い給料相場となっているため、魅力的です。
介護老人保健施設(老健)は、「病院から退院してすぐに自宅での生活に戻るのは不安…」という方が、リハビリに取り組んで在宅復帰を目指すための施設です。
厚生労働省の「平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護老人保健施設(老健)の平均月収は額面給料で32万6,540円。手取りで約26万1000円となっています。
年収ベースで平均約392万円。介護福祉士全体の平均月収は313,920円、平均年収が約377万円なので、やや高水準です。
病院に併設されていることが多く、運営元も医療法人であることが多い介護療養型医療施設(療養病床)。介護福祉士の平均給料は約31万円です。介護療養型医療施設の職員も概ね相場どおりと考えて良いでしょう。
手取りで約25万円、年収は平均約377万円。一般に、地方よりは都会、規模が小さい施設よりは大きい施設のほうが高い傾向があります。
ちなみに、より生活の場としての機能を充実させた施設である介護医療院が登場したことで、介護療養型医療施設は2012年以降新設されていません。現在、経過措置・移行期間が2024年3月31日までと定められており、それまでに介護医療院に転換されていく予定です。
介護士などの資格を取得したプロを自宅に招き、各種サービスを受ける訪問介護。
厚生労働省による「平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果」を見ると、訪問介護事業所に勤務する介護福祉士の平均給料は次の通りです。
こちらの給料についても、勤務先の規模や種類によって差があります。
デイサービス事業所に通い、入浴や食事、そのほか日常生活の介護を受けられるデイサービス。
デイサービスの介護職員の給料の相場は、東京都の場合で月収20万円から32万円程度。年収ベースでは240万円から450万円程度です。また、パートの時給は1,000円から1,600円前後が相場です。
デイサービスの施設の規模やエリア、年齢や経験などによって給料は異なります。また、給料には基本給のほか各種手当、ボーナスも含まれるので、実際の手取りは先ほど紹介した相場の8割程度です。
特定施設入居者生活介護とは、行政によって定められた基準をクリアした施設のこと。
行政に認められるレベルの設備、運営基準などがなければ、特定施設入居者生活介護の施設を名乗ることができません。
認知症の高齢者が、専門スタッフの援助を受けつつ5人から9人のユニットで共同生活する介護福祉施設「グループホーム」。厚生労働省の「平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果」によれば、グループホームの介護職員の平均給料額は、
となっています。デイサービスよりはやや高いものの、介護老人福祉施設や介護老人保健施設、訪問介護事業所などと比べると、やや低い傾向があります。
介護職員が、給料をアップさせるための代表的な方法は、「資格を取得する」「管理職などの役職にキャリアアップする」「転職する」の3つがあります。
それぞれの方法について、具体的に解説していきます。
介護職員初任者研修は、介護職員として働くうえでの最も基本となる資格で、取得者も多いため、これだけでは大幅な給料アップは期待できません。そこで、介護関連のほかの資格取得がおすすめです。
とくに、実務経験後に介護福祉士の資格を取得することをおすすめします。
資格取得の手順として、介護職員初任者研修終了後、3年以上の実務経験(3年以上介護事業所に就業して従事日数が540日を超える)ののちに、450時間の実務者研修を受講すれば、介護福祉士国家試験の受験資格が得られます。この試験に合格すれば介護福祉士になれるのです。
介護福祉士は国家資格なので、これを取得しているだけでもスキルが証明でき、資格手当が付くことも少なくありません。
取得が簡単な資格ではありませんが、経験を積んで専門知識を身につけていることを証明できるので、全国どこででも通用する人材として給料アップを望めます。
介護福祉士の国家資格を取得するためには、試験を受験し合格しなければなりません。
介護福祉士国家試験の受験申し込み時期は例年8月上旬から9月上旬までとなっており、第33回の受験申込書の受付は2020年8月12日(水)から9月30日(水)です。
次々回の第34回(2021年度)介護福祉士国家試験の申し込みについては、2021年6月下旬頃に(公社)社会福祉振興・試験センターから案内がある予定です。
また受験を希望される方は、事前に『受験の手引』を取り寄せて、申し込みに必要な書類を準備しておきましょう。
試験対策に悩んでいる方や過去問選びで困っている方は、介護福祉士国家試験対策アプリ「ケアスタディ」をご活用ください。
過去6年分の問題を完全無料で解けるため、苦手な科目を効率的に学ぶことができます。
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給料をアップさせたい方は、将来的にケアマネジャーを目指すこともおすすめです。
高齢者やその家族の相談を受けケアプランの作成などを行うケアマネジャーは、介護福祉士よりもさらに上の給料相場になります。
また、ケアマネジャーは要介護者の体に触れるといった直接介護は行わず、ケアプランの作成や給付管理が主な業務になるため、体が肉体的に衰えても介護の仕事を続けやすいといった利点があります。
老健やグループホームのように夜勤をともなう二交代制、三交代制の施設に勤務しているなら、夜勤回数を増やして夜勤手当を多くもらう方法もあります。また、夜勤をメインに働く「夜勤専従」のスタイルも、給料アップにつながります。
このように、日勤のみより収入アップにつながりやすい夜勤を中心にしたワークスタイルは、体調管理ができればおすすめの方法です。
介護職員として経験を積んで管理職にキャリアアップすれば、給料アップが望めます。介護施設での管理職には、リーダー職や施設長などの管理者という役職があります。
これらの役職は、勤続していれば必ずなれるものではありません。まずはリーダー職として介護職員と管理者との間に立つなど、実践で経験を積み、マネジメント力があるかどうかが見極められます。
決して簡単な道ではありませんが、介護業界で長く働き続けたいという人には、キャリアアップを目指すのも給料アップの方法になるでしょう。
現在の職場でこれ以上給料アップが望めない、という限界を感じている場合は、思い切って転職をするのもひとつの手段です。
介護施設によって給料が大きく異なることも少なくありません。
現在働いている施設とは別の介護サービスに転職するだけで、給料がアップすることもあります。例えば、特別養護老人ホームや介護老人保健施設は、平均給料で見てもほかの施設よりも高めの水準です。
給料アップをしたい!と考えている方は、現在勤めている施設とは別の種類の施設への転職を検討するのも良いかもしれません。
介護業界では慢性的な人材不足に陥っています。
そのため、人材不足解消のための政策として、処遇改善加算や介護報酬の引き上げなど、賃金アップの政策が現状続いています。
全国的に人材不足は今後の課題ですので、それに伴い介護職の処遇改善の施策も進んでいくと考えられます。
また、2019年度の施策のように、異業種からの転職組への待遇だけではなく、勤続年数の長い方を融通する処遇改善加算も注目されています。
『平成29年度介護従事者処遇状況等調査結果』によると、介護職員の勤続年数と平均月収には一定の比例関係を読み取ることができます。
具体的な平均給与額の数値を紹介すると、勤続年数1年未満(0ヵ月~11ヵ月)は23万2,460円、勤続年数3年だと27万9,020円、勤続年数5年だと28万9,980円、勤続年数8年だと30万3,600円、勤続年数10年では31万2,360円です。
全体的な傾向をまとめると、介護職員の平均月収は勤続年数が1年増すごとに、5,000円~3万円増加しています。
人手が足りない介護分野において、熟練の介護福祉士は特に貴重な人材です。2019年10月にはその確保のため、「特定処遇改善加算」という制度が新たに導入されました。これは、勤続10年以上の経歴を持つ介護福祉士の給料を8万円程度アップさせるというものです。
特定処遇改善加算は、施設側が所定の条件を満たした場合に、介護報酬を請求できる加算です。
介護福祉士の給与額を底上げできるだけでなく、「介護職として資格を取得しつつ継続して働くことで、待遇を改善する」という道筋をより明確に示せるようになりました。
介護の人手不足は将来的に厳しい状況のため、今後もこうした待遇改善が図られると見込まれます。